『評価されるデザインには“理由”がある。その理由を分析することが最初の一歩』 かつてコンテスターで活躍、現在は審査員も務めるbianca HITOMIのクリエイティブ論
いい作品を見て「なぜそれが評価されているのか」を分析する
ー20代前半で早くもコンテスト優勝歴がありますが、学生時代からセンスの持ち主だったのですか?
専門学校時代は特にクリエイティブな活動はしてきませんでした。ですが、美容師になったらサロンワークだけではなく、自分の作品をつくったり、コンテストに出場したりしたいと思ってbiancaに入りました。
アシスタント時代、代表の中井からよく言われていたのは「いい作品を見て、なぜそれが評価されているのかしっかり分析しなさい」ということ。いろいろな作品やコンテストを見て、何がよくて評価されているのかを考えることが習慣になりました。すると、評価される作品には共通点があることに気づいたのです。それを一言で言い表すとしたら、「バランスが取れている」ということ。それまで、上手くなりたい一心で闇雲に作品撮りをしていた時期もありましたが、モデルとファッション、ヘアデザインの全体のバランスに気を配るようになりました。
もう一つ大事だと思うのは、自分が好きなものを分析することです。自分が好きな写真やヘアスタイル、デザインなどを集めてファイリングしておくと、それがデザインの引き出しになるんです。好きなものを集め続けていると、自分の好きなものが固まってきて、いつしか自分オリジナルの作品がつくれるようになってきました。
好きなものを集めるためには、幅広くいろいろなメディアに触れることが大事だと思います。業界誌はもちろん、ハイファッション誌や女性誌も読みます。ネットサーフィン的な感じで、いろいろなサイトを見て、画像を集めることもあります。幅広くなんでも見るっていう感じですね。
モデルさんの個性を引き出すためにギリギリまで攻める
―今年に入ってからはどんな作品をつくっていますか?
今年はコロナの影響で思うように作品撮りができなかったんですよ。そんなとき新美容出版さんから「個性派ロングデザイン」というお題をいただき、自由に作らせてもらいました。同じテーマで他の美容師さんの作品も掲載されるので、他の作品と区別できるように強く意識しながらつくったものです。ブリーチカラーのセミナーをさせていただいたり、特集を組んでいただくことがあるので、カラーリングは私の持ち味だと思っています。だからデザインの中にも取り入れました。
今回は4人のモデルさんでデザインさせていただきました。一人ひとりの個性を打ち出していくために、モデルさんの髪質や、色との相性、ヘアスタイルなどを考慮して、似合うものをつくっていくというやり方ですね。そうすれば、自然と4人の個性が際立ちます。
©SHINBIYO
モデルさんありきでデザインをつくるので、毎回、モデルさんの個性を引き出すギリギリのところを攻めていますね。そのためにも、モデルさんの嫌なことをしないことが大事だと思います。美容師さんにバッサリ髪を切られてしまったことがトラウマになっているモデルさんもいるようです。私も撮影などで、モデルさんの髪をバッサリ切ることがあります。でも、その前に必ず、自分が「この撮影に賭けている」ことを伝えているんです。モデルさんの気持ちになって、真面目に向き合っています。
カメラマンさんに対しても同じです。撮影に賭ける想いを共有しますし、つくりたい世界観についても詳細に打ち合わせをします。絵を描いて、イメージを共有することも。話し合いを重ねて、模索しながらつくっています。作品撮りは、カメラマンさんとモデルさんと力を合わせて行う真剣勝負です。
>今後も驕らず、チャレンジャーとして他者に評価されるものを作り続けたい