痛んだ髪に施術して、誰が幸せになれるんですか?
アジアンビューティーを取り戻すための啓発活動
-お客さまの髪と向き合うために、知識も技術も商品も極限まで高めているのですね。
「髪の毛のおさまりが悪いんでパーマしてください」とか「ちょっと髪の染まりがわるいので発色いいカラーいれてください」とか言われたとしますよね。そもそも、「おさまりが悪い」のも「染まらない」のも、髪に何かしらの問題があるからです。美容師さんはそのことを理解していても、「わかりました」と受けてしまう。失客が怖いですから。その気持ちはわかるけれど、施術の結果、余計に髪が痛む・・・。痛んだ髪に施術して、誰が幸せになるんでしょうか?
お客さまに原因がないわけではありません。安く手軽にケアすることばかり考えて、そのリスクにまで気がまわっていないと思います。髪に合わない商品を使って、知らず知らずのうちに髪を傷めてしまっているかもしれない。髪の洗い方、トリートメントの仕方、ドライヤーの使い方も知らない方が本当にたくさんいる。僕はお客さま向けの啓発活動もしているんです。
-谷村さんは、これまでの美容室とは違う、新しいカテゴリーを創ろうとしているように見えます。
僕はもう一度、美容業界を見つめ直して、作り変えていこうと思っています。お客さまの美髪をつくる施術トリートメントが広がれば、みんな幸せになれるじゃないですか。お金は大切ですけれど、個人的な成功には興味がありません。僕は施術でいただいたお金は全て、講師の育成や「髪の病院」の取り組みのマーケティングのために使っています。僕は美容師の地位をあげたいと本気で考えて行動しているんですよ。
お客さまも、美容師も、みんなで幸せになろう
「髪の病院」を始めてから、素晴らしい縁にも恵まれました。たとえば、モンゴル国文化名誉大使の佐藤紀子氏が「他の美容室と違う」ということで興味を持ってくださり、そこから「髪の病院」はモンゴルへと広がっていきました。大統領夫人をはじめ、要人の方々に施術させていただきました。やがてモンゴルの方のお役に立ちたいと考えるようになって、孤児院と美容専門学校をつくることに。子供の未来と雇用をつくることで、モンゴルの発展に少しでも貢献したいんです。
その一方で、ハイエンドなサービスも動いています。フランスの高級ブランドや日本の高級車ブランドの顧客に向けた、コンシェルジュサービスのひとつとして「髪の病院」が選ばれたのです。お困りごとはなんでも解決するのがコンシェルジュですから、僕らのサービスはピッタリということなのでしょう。
「髪の病院」を始める前には想像すらできなかったことがどんどん実現しています。美容師に求められているものはデザインだけではありません。お客さまの髪のことを真剣に考えたら、もっとヘアケアに力をいれるべき。お客さまの痛んだ髪を、さらに傷めつけるような施術は、もうやめましょう。そして、みんなが幸せになる方法を一緒に考えていきましょう。
- プロフィール
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髪の病院 株式会社
代表 谷村 正一(たにむら しょういち)
2002年「SANC髪の病院」設立し、本質的な髪の健康美の研究に着手。以来、「安心・安全・健康」をコンセプトに、新しいヘアサイエンスを探求。薬剤過多のスパイラルを断ち、髪と頭皮を自然な環境に戻して、美しい髪のサイクルを生み出すことに成功。2015年には髪の病院株式会社へと発展し、美容界に新たな潮流を巻き起こしている。トリートメント・人材教育・経営セミナーなどを年間200回開催。セミナーを受講した美容師数7万人。
http://www.kami-byoin.com/
(取材・文/外山 武史)