丸顔をさらに丸く見せる!? DaB八木岡聡氏が考える“似合わせ”の極意とは

⑤

 

パーソナルデザインが“似合わせ”を生み出す

 

-パーソナルデザインとはどういった意味なのでしょうか?

 

「簡単に言うと、先ほどから話している“存在を作る”ということです。また、お客さまに提供するヘアデザインを、その方自身の価値を高めるレベルにまで作り上げることですね。

 

例えば、ハイブランドの仕立てのいいスーツを身にまとい、きちんとした姿をつくります。それによってその人に自信がついたり勇気が湧いたり、その人の行動力や人間性までにも影響を与えることができたりしますよね。そのように、僕たちの仕事はヘアを通じて本人のバリューさえも上げられるような価値のあるものを、オートクチュールなもので提供するということです。

 

『◯◯風のヘア』というものではなく、そのデザイナーと出会ったからこそのデザインを提供して価値を生みせたら、本当の“似合わせ”を感じてもらうことができるはずなんです。

 

美容師も成長していますが、それに伴いお客さまもどんどん感度が高くなります。そして、年齢と共にコンプレックスやこだわりにも変化が現れてきます。僕の若い頃は『技術』が商品の時代でした。正確に、速くカットができれば通用する頃です。それから海外の情報だったり、ヘアケアの情報だったりが必要とされ始めた『技術+情報』の時代。しかし、それだけでは満足しなくなってきているのが『今』なんですよね。

 

そこで重要となってきたのが“存在を作る”ということ。今の時代はどこのサロン、美容師でもある程度の技術はもっているので、そこの部分が薄く、同じ技術であれば一般的な価値観として価格の安いサロンに行ってしまいます。

 

そういった時代の流れを受けて『パーソナルデザイン』を提供できる美容師にならなくては、周りと差別化をすることも難しくなるでしょうね」

 

-時代の流れを肌で感じていたんですね。今までの話を含め、若手美容師さんに感じていることなどはありますか?

 

「先ほど言ったように、技術が本当に下手だという人はいないはずです。しかし、パーソナルデザインを志すならば、幅広いジャンルや年齢層に対応できなくてはそれを提供することができません。そう考えたとき、自分が苦手なことに対して素人レベルになってしまっている人も多いのでは? と感じます。それが伸び悩む人の結果をつくっているのだと思います。

 

逆に、自分の好きなジャンルに対してはプロが多いんですよ。『これが好き』というものを選んできた自負があるでしょうし、たくさんの魅力を知っています。

 

しかし、一つ上の存在になるためには、自分の苦手な分野においてどれだけ知識をもっているか、理解できているか、提供できるものがあるかが重要ですよね。

 

これまで伝えたパーソナルデザインを提供できるようになることで、僕が改めて感じたことがあります。たとえ、お客さまの感度がどんどん高くなり、求められるものがどれだけ細分化されていったとしても、美容師はどんな人にも適応できる職業だということです。

 

美容師は、たしかにビジネスとして難しい要素がありますが、人に必要とされ、半永久的になくなることがない数少ない業種です。そういった意味で美容の将来は明るいわけで、これから時代を築き上げる若手美容師さんたちには期待しています」

プロフィール
株式会社DaB 代表/株式会社ビタミンズ代表
八木岡 聡(やぎおか さとし)

表参道、代官山にDaBを展開。高いデザイン性とテクニックを誇るヘアデザイナー集団の代表を務め、インダストリアルデザイナーとしても、照明器具や家具、美容器具関連のプランニングやデザイン、さらに化粧品の開発及びディレクションなど幅広く手がける。

<表参道店 2014年10月10日リニューアル>

 

(取材/文 QJナビ編集部)

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