良質な学びは、良質な「問い」から生まれる -KINOSHITA GAIEN EAST STREET 木下 裕章さんの習慣 前編-
教える立場の人間は、誰よりも学ばなければならない
やがて僕は美容の世界に入りました。20代は美容師としてがむしゃらに学び、仕事に打ち込む毎日を過ごしました。30代からは自分が教える立場になり、「“教えること”を学ばなければ教えられない」と痛感するように。優れた技術を持っているからといって、美容室経営や教育ができるわけではないからです。
技術以外の学びが足りていないという自覚があったので、経営や教育に関することを徹底的に学びました。会計を学ぶために会計事務所に通っていた時期もあります。そのおかげで会計の知識は人に教えられるレベルになりました。スタッフの教育では「教え方」が大切ですから、指導者を養成する学校に通ったこともあります。そうした積み重ねがあったから僕はサロンを経営し、スタッフに教育を施す立場にいるのです。
自分が理解していることしか人には教えられませんから、教える立場の人こそ誰よりも学ぶことが大切です。技術に関しては今でも川島文夫先生から学んでいます。なぜ若い方ではないのか。僕が知りたいのは技術だけではなく、その裏側にある考え方、生き方、70歳を超えても誰よりも努力する姿勢なのです。
もし仮に僕がファッションを学ぶことになったら、若手のデザイナーよりもヨウジヤマモトさんや、コシノジュンコさんのような方から学ぶでしょう。何十年も最前線で活躍し続ける人生の先輩たちの教えは、若手デザイナーの話とは内容の厚みがちがうと思うのです。