「仕上げにブラシを使わない」が僕の流儀であり習慣 -風と雲の美容室 JUNさんの習慣 後編-
表参道の有名店PHASEで最もアバンギャルドなスタイリストだったJUNさん。独立した現在は活動拠点を高円寺に移し、ワイルドな見た目からは想像できない(?)やわらかく繊細な技術で、一人ひとりのお客さまに似合う美しい髪型を提供しています。そんなJUNさん」の仕事の流儀から、どんな思考習慣を持っているのか探りました。インタビューは前後編の2回。今回は後編です。
スタイリングでブラシを使わない
「いつも美容室を出るときは綺麗なんだけどね…」
あるお客さまが僕に言った一言です。美容師は渾身のカットをして、カラーやパーマもして、ブローで仕上げる。だけど、そこで完成した髪型は、たった一度、お客さまがおうちで頭を洗ってしまうと、もう元には戻らない。僕は若いころに、先輩にブローを任されて、時間かけて丁寧にブラシを動かしているとき、「こんなスタイリング、お客さまはおうちでできないぞ…」と思っていました。
美容師がどれだけ一生懸命、髪を切り、パーマして、カラーしても、お客さまが家で再現できなかったら意味がない。だから僕は、再現が難しいヘアスタイルが嫌いで、セルフスタイリングが楽なヘアスタイルを追求してきました。
なぜなら、髪型というのは美容師の作品ではなく、お客さまが日々使うものだからです。そんな想いがあるから僕は、スタイリングするときにブラシを使いません。
以前勤めていたサロンでは、僕の仕事のやり方に批判的な人もいました。「もっとお客さまに寄り添って、完璧にしてから帰せよ」と。でも僕は、完璧を目指してスタイリングに手間をかけることこそ、お客さまに寄り添っていないと思っていました。