トップメイクアップアーティスト山口啓さんに聞くこれから伸びる技術者と学びのヒント
100個問題があっても1日1個解決したら100日でなくなる
福井:今後どういう人材が伸びると思いますか?
山口:うちにも50人ぐらいのスタッフがいますけど、ほとんどBe-STAFFの卒業生なんですね。今成長しているスタッフの学生時代を思いだすと、ずば抜けて不器用だった人ばかりですね。「この子どうしよう。人の2倍も3倍も手間かかるな」って人の方が結局伸びている。不器用だと何度も失敗をするわけじゃないですか。失敗したことって記憶にとても残る。だから失敗しないようにと努力するし、失敗しない技を覚えていく結果、成長できるんですよね。
子供のころはいいところを伸ばしてもらえた。でも大人になってプロになったら、できないことをできるようにしていくことも必要。まずはアベレージを上げる努力をしてほしいんです。僕は人前でしゃべることが苦手だから、あえてしゃべる仕事につきました。今人前でしゃべるお仕事をいただけるのもその選択をしたからだと思っています。
目の前の問題を1個ずつ解決していくつもりで、できないことをできるようにしていく。100個問題があっても1日1個やったら100日で解決できますよ。プロになるには長い時間がかかるけれど、今は情報もたくさんあるから僕が10年かかったことをスタッフは2、3年で覚えてくれるし、その生徒はまたそれを1年、2年で覚えられる。そうやってメイクアップアーティストの層を厚くして華々しい時代を作っていきたいと思っています。
日本は人口に対してまだメイクアップアーティストが少なすぎるんです。逆に美容師さんは沢山いらっしゃいます。顔をコントロールできれば心もケアできます。より美容師としてブランディングしていくのであれば顔(メイク)と頭(ヘア)両方の技術を身につけた方がいい時代だと僕は思います。
インターナショナルライセンスで日本の美容をもっと世界へ
日本の美容をもっと世界で通用させたいという山口さんと福井さん。お二人が携わるCity&Guildsについても福井さんに伺いました。
―山口さんがCity&Guildsのベリファイヤーとのことですが、そもそもCity&Guildsとはなんなのでしょうか?
日本の美容の水準はとても高いですが、世界に向けてそれを明確化するためにも、インターナショナルライセンスの必要性を感じていました。そこで2016年にイギリス政府が認めるCity&Guildsの技術認定システムを日本でも導入することしたんです。28産業120職種において認定をする機関ですが、美容の分野はヨーロッパをはじめとする世界31カ国で導入されています。City&Guildsの認定試験に合格すると、世界で一定水準の美容の技能を有していることが証明されます。すごく簡単に言うと英検みたいなものだと思ってください。英語できますっていうより英検1級ですと言えれば信用性がありますよね。
美容の認定はメイクやヘアなどの分野に分かれていますが、啓さん(山口さん)はそのメイク分野の認定を行うベリファイヤーであり、最終評価者なんです。実はすごい人です(笑)。啓さんが教えているメイクスクールのBe-STAFFはCity&Guildsと相互認証されていて、Be-STAFFに入学して技能を習得し、『相互認証試験』に合格することで、City&Guildsの認定証を取得する事ができます。
―美容師さんがヘアの分野で認定を取得するのにはどんな意味がありますか?
まず美容学校で授業を受けることによって取得できる認定と、すでに美容師として働かれている方が取得する認定があります。美容学校生でしたら特にCity&Guilds美容師さんの場合は海外で働くときなどに技能を示す証明になります。今後日本国内でも普及が進みますので、国内での転職時にも役に立つ認定になってくると思いますよ。
―認定を受けた人はどのくらいいるんですか?
ヘアとメイク合わせて4年間で約2000人の方が認定を受けています。なかには美容学生時代にこの認定の講習を受け、スポンサーサロンに評価をされて卒業後すぐジュニアスタイリストとして採用された方もいます。
―今後も認定者を増やしていくのでしょうか?
認定者を増やして日本の美容を世界に輸出したり、逆に海外から学びに来る人を増やしたりしたいと考えています。でも認定は全体の一部で、本来の目的は日本が美容立国を成すために、美容師さんが生涯学び続けてレベルアップできる教育のプラットフォームを作ることです。認定に加え、すでに多くの方に受講していただいているアカデミーや海外研修についてもCity&Guildsの認める高い水準でさらに広げていきたいと思っています。
高いレベルを誇る日本の美容技術はこれからさまざまな可能性を生みそうです。技術を磨き認証を受けることで、世界で認められる美容師の一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
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プロフィール
Be-STAFF MEKE-UP UNIVERSAL GENERAL PRODUCER
山口 啓(やまぐち けい)
ヘアメイク、メイク講師の傍ら、大手メーカーのアーティストを経て、ロサンゼルスにてシューティングメイクアップの技術に出会う。その後あらゆるジャンルのメイクアップの研究と同時にその理論、技術をもとに、商品開発や執筆活動をはじめる。教育活動やアーティスト活動をプロデュースすることを中心に特に美容業界の有名アーティストの方々とのコラボレートは多く、その作品群はJHAをはじめとしたフォトコンテストでも数々の受賞に携わる。全国での講習活動の依頼が多く。年間250回以上もの講習を行っている。1996年からはじめたフォトグラファーとしての活動も『生もの』である『美』をいかに美しく残すかを追求しつづけている。Be-STAFFゼネラルプロデューサー、City&Guildsベリファイヤー。その他全国の美容学校等の特別講師等多くの肩書を持つ。
プロフィール
福井 幸大(ふくい こうだい)
株式会社セイファート
City&Guilds事業マネージャー