ハゲを隠す時代は終り…これからは着こなす時代だ!
ハゲ薄毛を隠す・増やすに変わる選択肢「着こなす」を提案している株式会社カルヴォの松本圭司(まつもとけいじ)さん。メーカー勤務の後、日本における経営学・商学の中核的研究教育拠点、神戸大学大学院経営学研究科でコンプレックスを解消するビジネスを研究し、MBAを取得した異色の経歴の持ち主です。松本さんの書籍のタイトルにもある「ハゲを着こなす」とはどういうことなのか、そして「ハゲを着こなす」ために美容師に何ができるのか教えていただきました。
なぜ日本のハゲは生きづらいのか
イタリアやスペインでは、男性の薄毛を「Calvo(カルヴォ)」と呼んでいます。多くのCalvoは薄毛であることを隠さず、おしゃれを楽しんでいますし、その表情に悲壮感はありません。その姿を見て大人の色気を感じる女性もいるほどです。
一方で、日本はどうでしょうか。時代が変わってもテコでも動かない価値観に「ハゲ薄毛は恥ずかしい」というものがあると思います。たとえば、80年代、90年代にスキンヘッドの人はほとんどいませんでした。とくに会社員でスキンヘッドにするのは異端であり、銀行に勤めている僕の友人は会社に「スキンヘッドにしてもいいですか?」と尋ねたそうです。いつの間にかスキンヘッドも選択肢としてアリという風になってきたのかな、とは思いますが、スキンヘッドにするのは最終手段。それまでの期間をどう過ごすか、もしくはスキンヘッド以外の選択肢を提供できないか模索し、『ハゲを着こなす』(WAVE出版)を書きました。
髪や頭皮のスペシャリストではない私が、髪の本を書いたのには2つの理由があります。一つは、私自身も薄毛に悩んできたこと。昔、SNSの先駆けであるmixiが招待制だったころ、高校の同級生の女の子が私を見つけてくれたんです。アイコンには自分の写真をつかっていたのですが、それを見て「え! その髪どうした?!」 ってリアクションをされたんですよね。薄くなってきてたのはわかっていたけれど、その反応はないやろと。さすがに他人、しかも女性に言われたらグサッとくるんですよ。
もう一つの理由は、美容師さんも薄毛に関する知識はそんなに持ってないんじゃないかと感じていたことです。就職したばかりのころ、理髪店で「発毛効果がある薬を輸入しているから、よかったら使ってみる?」と聞かれて、初任給で買ったんですよ。真面目にそれを頭に塗っていたんですが、みるみるうちに毛が細くなり、どんどん抜け落ちて明らかに薄くなってしまったんです。そのときに思ったのは、美容師さんはカットの技術はあるけれど、みんながみんなそこまで髪や頭皮に詳しいわけじゃないということ。
「魅せるハゲ」をつくる美容師を増やしたい
薄毛に悩む人が駆け込むところといえば、増毛やカツラを手掛けている会社さんですよね。でも、お金に余裕がないと通い続けられません。だから、結局どこに行っていいかわからず、悩みっぱなしの人が多いと思います。自分の髪を委ねてきた美容師さんに相談できれば理想ですが、なかなか相談できないのが実情なんです。だから、「いつもと同じでお願いします」という頼み方になってしまう。そのことをぜひ知ってほしいと思います。
薄毛の男性をサポートしてくれる美容師さんも、まだまだ少ないです。薄毛の男性をサポートするプロフェッショナル「美USUGEマイスター」を育てる「一般社団法人 日本美USUGE協会」を立ち上げたのはそのため。薄毛に悩む男性が、薄いところを隠すのでも、毛を生やすのでもなく、ハゲを着こなせるように導く美容師さんを増やしたいと思っています。
欧米の男性が薄毛でもカッコよく見えがちで、日本人にカッコいいハゲが少なく感じるのはどうしてか。いくつか要素がありますが、大きな要素の一つは「正面から見た顔の縦横比」の違いです。欧米人は面長が多いため、縦÷横の比率は高くなります。一方で日本人は、丸顔、四角顔が多いため、縦横比は低くなりがちなんです。欧米人が1.6~1.7で、日本人は1.5以下であることが多い。つまり、この縦横比を調整できれば、カッコいいハゲをつくりやすいんです。
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