大人の美容師が持つべき「一生モノ」の価値観とは? —美容師のカバンの中身 PEEK-A-BOO 福井達真さん
気になるあの人のカバンの中身を見せてもらう、シリーズ「美容師のカバンの中身」。今回は美容の技術を極めるだけでなく、その時々にはまった趣味までも極限にまで突き詰める、PEEK-A-BOOの福井達真(ふくいたつまさ)さんのもとにうかがいます。年齢を重ねるとともに変わる、モノへのこだわり。どんな買い物をしてきたかが、将来かっこいい美容師になれるか否かの分かれ道かもしれません。
憧れたり背伸びをしてきたからこそ、いま自分の満足のためだけにものを選べる
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・本 ・手帳とデルタのボールペン ・ライカのカメラセット
・ハンドメイドの革ペンケース ・サーフィン後につけるヘアオイル、保湿美容液
・筆ペン ・ハンドメイドのカバーをつけた水筒
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小物を選ぶときは、一生使えるものというスタンスで選ぶことが多いですね。ファッションの場合は旬のものをという感じなので、少しスタンスが異なるかもしれません。例えば手帳につけているボールペン。これはハンドメイドにこだわってもの作りをしている、イタリアの「デルタ」というブランドのものです。書をするようになって、ボールペンで書く普段の字にもこだわりたくなった時期に購入しました。ブランドの創業20周年記念で2002年に販売されたモデルだから、もう15年くらい使っています。普通のボールペンよりも高価格だけど、壊れてしまったら修理対応もしてくれるし、まさに一生使えるものです。
ブランドものならば一生モノ、という単純な話でもないんです。自分が気に入ったら安くても高くても、一生モノになる可能性はあると思っています。ただそう思えるようになったのは、最近の話。モノに対する幾つかの価値観の段階を踏んで辿り着いた考えです。
アシスタントや若手スタイリストの頃はそれほどお金を持っていないじゃないですか。小物でも洋服でも、憧れのものがあっても買えないですよね。仕方がないから当時は僕も、憧れのものに似たものを探して買っていました。でもそういうものって本気では気に入らないし、すぐに買い換えることになるんですよ。高くてもがんばって買ったほうが、結果的に安上がり。そう気付いた頃には、売上も上がってきてちょっとよいものが買えるようになっていました。その次にきたのは、本物にこだわる時期でしたね。大人は質のよいものを持つべきと思っていたし、背伸びもしたかった。名前のあるブランドが、「本物」の基準になっていました。その頃と比べると、今はかなり力が抜けてきたかなと思います。ブランドや社会の評価ではなく、自分の感覚で「本物」と感じたものを選んでいるという感じですかね。
でもはじめからこういうモノ選びをしていればよかった、とは思わないですよ。若い頃の何かに憧れる気持ちや、がんばって手に入れた満足感や高揚感。そしてブランドものを実際に手にして磨いてきた審美眼。それらが積み重なった結果が、今の自分のモノ選びにつながっていると思うので。やっぱり必死になってものを手に入れた人にしかわからない、美学というのもありますもんね。
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