「日本の美容師として生きているなら日本髪を結えた方がいい」FEERIE代表・新井唯夫さん
日本の伝統である日本髪の技術を後世に伝えなければいけない
―2015年に「平成日本髪入門―成人式・七五三・婚礼に使えるアップの原点」という日本髪の教本を発売されましたが、作ろうと思ったきっかけは何でしょうか?
この本の中では“新日本髪の技術”と“江戸時代から伝わる日本髪の技術”を合わせたものを教えています。江戸時代に形作られた日本髪は、時代の流れの中で、どんどん変化してきたわけですが、そういうものを少しだけ本来のあるべき姿に戻してあげることが必要ではないかと思ったんです。
江戸時代から伝わる日本髪の技術を後世に伝えなければ、という使命感も本を作った理由です。美容師免許を持っていても日本髪を結える人はほとんどいないし、専門学校でも日本髪を教えない。日本の伝統の中で生まれた日本髪という文化を後世に伝える人が少ないまま、次世代に繋いでいくのは問題だなと。『なんちゃって』というのは言い過ぎですが、そのようになってしまっている日本髪の技術をどうにか少しでも戻したいという思いがあって、この本を出したわけなんです。
“新日本髪”と“江戸時代の日本髪”の技術を合わせたものを新井さんは考案 ©女性モード社『平成日本髪入門』
―新井さんが考える日本髪の魅力とは?
日本に伝わる技術の中でも、着物の美しさっていうのは、重ねて襟をつけて、帯を巻いてという複雑な中に表れるまとまりにあると思います。日本髪もそう。あえて分割させたうえで、毛流れを整えた髪の毛で形付けていく。髪の毛が分けられていて、まとめられている。その面の美しさ。それだけで、どこか神聖なものを感じませんか? まっすぐな黒髪で、直線のようでいて曲線で、故意に曲げられていく感じやバランスに美しさが感じられます。美容師は伝統文化を作れる人なわけだから、その日本髪の美しさを理解していいてほしいですよね。
―教本を作っていく中で、新井さんはどういうことに感銘を受けましたか?
日本髪って、江戸時代はその髪型が当たり前だったんですよね。もしかすると日本髪じゃなかったら、「あなたはおしゃれじゃない!」みたいに言われていたんですよね、きっと。バブルのときのひさしみたいな前髪とかもそうなんですが、人って感化されるんだな、と思いました(笑)。こんな特徴のある日本の文化が長く続いてきたと知ると感動しますね。
また髪型とともに道具も進化してきました。そう考えてみると、カットでも、カラーでも、パーマでも、まだまだ工夫できることはいっぱいあるんじゃないかって。まだまだイノベーションできる部分があって、工夫次第できることは山ほどあると思います。