美容師から「お金の無駄」とバカにされて。アニオタ美容師が作るコスプレウィッグの過去と今—Lobby 高橋翔さん
コスプレウィッグで大切なのはお客さまの“解釈”を再現すること
コスプレウィッグは大まかな展開図を頭の中で描き、パーツごとに何パターンも想定しながら、作り進めていくようにしています。漫画やアニメは絵によってキャラの髪の描写が変わるので、はじめから完璧な展開図を作って切っていこうとすると、必ずバランスが悪くなってしまうんです。
制作する上で一番大切にしているのは、お客さまがイメージしているキャラの髪型を再現すること。ウィッグカットの依頼を受けるようになったとき、1度だけお客さまに怒られたことがありました。「私が求めているキャラの髪型と解釈が違います。やり直してください」って。僕は再現性が高いと思っていても、お客さまのイメージされているものが同じとは限りません。
なので、依頼を受けたあとは、そのキャラのアニメを見たことがあっても1回見てから制作します。動画でそのキャラを見ると、髪の動きだけでなく、質感や線の太さなど漫画との違いがわかり、お客さまが漫画とアニメどちらの方向で再現してほしいのか、質感や束感などはどういうものをイメージしているのか、解釈をすり合わせることができるんです。制作段階でも8割できたタイミングで、お客さまに確認してもらってから仕上げに入るようにしています。
また、同じキャラクターを別のお客さまから頼まれても、1体1体違うものを作っていることもこだわり。顔や頭の形はお客さまによって違うので、その方に一番似合うように考えています。例えば、目を大きく見せたいと考えている方には、前髪を重めに切ったり、顎のラインをシャープに見せたい方には横の髪をフェイスラインに沿うように残したり。お客さまの求めるレベルも高いので、クオリティを高めるための工夫は欠かせません。
心ない言葉を言われ、悔しい思いをした過去。美容師に認められて、今思うこと。
アニメキャラクターのウィッグカットをはじめたころは、美容師から「気持ち悪い。そんな勉強やっても意味ない」とか、「お金の無駄」など心ない言葉を受けることもありました。正直、とても悔しかったです。
でも今は、美容学生からDMで相談があったり、他店のスタイリストの方から「セミナーをやってほしい」という問い合わせがきたりするんです。同業者の方から、「すごい」とか「こういうやり方があったのか」ってお褒めの言葉をいただくことも多くなり、とてもうれしいです。認めていただけるようになったのかなと思いはじめています。
今、サロンにこられているお客さまの9割の方がアニメ好き。ありがたいことに、お客さまが僕のことをすごく推してくださって、お知り合いを紹介してくださることも多いんです。最初のカウンセリングが終わるとその後は「今季のアニメ何を見てますか?」ってずっとアニメの話をしています。お客さまと好きなものを共有できるのは、とてもうれしいこと。しかも来店されるのが、某アニメ玩具メーカー会社の方やウイッグメーカーの方など、おもしろい話をしてくださる方ばかりなんです。接客を通して、いろいろな話を聞けるのが楽しいですね。
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