時短営業で売上&笑顔増!つくば発の「働き方改革」
家庭円満・不仲はサロンでのパフォーマンスに影響する
-今後、新しく始めようと考えている制度はありますか?
宮本さん:子どもが小学生のスタッフが、日曜、祭日にも休暇を取れるようにしたいと考えています。というのも、僕の子どもが今小学生なんですね。小学校は土日祝日休みですが、サロンは営業しているので、出かけることができないし、コミュニケーションが不十分になってしまうと思うんです。日曜日や祝日に休みをとることができれば、家族で出かけることができる。子どもと過ごす時間が増えることで、信頼関係が深まって、家庭生活がうまく回るようになる。これが重要。なぜなら、家庭内のいざこざは仕事に出るからです。
商売している両親の子どもって愛情が足りないからか、グレるイメージありませんか? 美容室の息子が遊ぶ金を欲しさに、レジのお金を抜くとか…(笑)。家庭がうまくいっていないと仕事にも影を落とします。
僕が実際に日曜日や祝日を休ませてもらって、デメリットは何一つなかったので、スタッフの子どもが小学生に上がったタイミングで、制度をスタートさせようと思っています。
-素敵な環境ですね。藤田さんは今後、この環境でどのように働いていきたいですか?
藤田さん:美容師をやりながら、物心両面で豊かな暮らしができればいいなと思っています。自分だけではなく、後輩たちとも一緒に。美容師全体で見ると、平均年収はとても低いじゃないですか。それを上げてきたいのが僕の願いですね。少しずつ売上を上げるコツもつかめるようになってきたので、それを伝えていけたらと思います。
今、僕は毎日が楽しいんですよ。ある程度のお給料をもらいながら、店長という役職にもつかせてもらって、気持ちに余裕があるんですよね。お休みもしっかりとれますし。だから、「毎日が楽しい」って思える境地に近づいてきている。そこに後輩のスタッフたちと一緒にたどり着くことができたら、こんなに素敵なことはないんじゃないかと思います。お客さまへのおもてなしや、施術の質もさらによくなるはずです。
美容業界は変えられないが、自分の組織は変えられる
藤田さん:このあたりには、会社として成長し続けているヘアサロンってあんまりないんですよ。僕はジールサロンを何百年と続く会社にしたいと思っていて、そのためには、社長が退いても経営は揺るがないような体制を、自分たちやその下の世代も一緒になってつくっていくべきだと考えています。
-藤田さんの想いを聞いて、宮本さんはどう感じましたか?
宮本さん:「美容業界を変えるんだ」っていう経営者さんもいますが、僕にはそれはできないと思っています。でも、業界は変えられなくても、自分の組織は変えられる。そう思ってこれまでやってきました。
いつも心の根っこにあるのは、一緒に働くスタッフに恥を欠かせたくないという気持ちです。「あんなサロンで働いているから家も買えないんだ」とか「あそこで働いていることは知られたくないよね」とか、絶対に言われないようにしたい。だから「毎日が楽しい」という藤田くんの言葉は、とてもうれしいです。
昔、親父の知り合いの大工さんやペンキ屋さんの親方も同じようなことを言っていました。弟子に恥をかかせないように、ちょっとおせっかいなくらい面倒を見ていた。美容業界こそ、僕が見てきた親方たちのようなおせっかいな人が必要だと思うんですよね。
マジメに経営すれば、美容室だって一般企業に負けない労働環境をつくることができると僕は信じている。美容業界に進む人が減っている今、「美容室だから」という理由で言い訳して、問題のある労働環境を放置している場合じゃないんですよ。
- プロフィール
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ジールサロン/代表取締役
宮本 勝芳 (みやもと かつよし)
茨城理容美容専門学校を卒業後、つくば市内の人気店に入社。伝説的な売上を記録するスタイリストに。その後独立し、つくば市内に「ジールサロン」、阿見町に「マークス」を立ち上げる。社会保険加入、ボーナス支給、週休2日制、土日営業時間短縮など、労働環境を整備。茨城県内では他社に先がけて「働き方改革」を進めている。
http://www.zealsalon.com/
- プロフィール
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ジールサロン/店長
藤田 和彦 (ふじた かずひこ)
タカラ美容専門学校を卒業後、つくば市内の人気店に入社。宮本氏からスカウトされてジールサロンに転職。現在は店長として活躍中。美容師ブロガーとしても有名で、ジールサロンの新しい取り組みや、カラーをはじめとするナレッジ、プライベートの微笑ましいエピソードなどを紹介している。
http://kazuhiko-fujita.com/
(取材・文/外山 武史 撮影/菊池 麻美)
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