メンズ支持率ナンバーワン! Gigi豊島春華さんの“絶対に否定しない”接客術
やりたいことをやり続けるねばり強さが大事
私がメンズをはじめた当時は、スタイリング剤を使って束感を出すスタイルが流行していましたが、これは美容師でもつくるのが大変です。正直、お客さまが再現するのはむずかしいと思っていました。
束感が流行するなか、個人的にはもっとナチュラルなスタイルのほうが好きだったので、ドライヤーをかけただけでかっこよくなれる再現性の高いスタイルを提案し続けていました。それが今は時流にマッチするようになり、お客さまにも受け入れられて仕事がどんどん広がっています。自分のやりたい方向性を曲げずに続けてきてよかったです。
やってみてわかったメンズの繊細さ
メンズをやりはじめて、男性がリラックスできる雰囲気は、女性の場合と少し違うことに気づきました。女性スタイリストや女性客の多い美容室に行くのは、男性にとって気恥ずかしく勇気がいるものです。「一人だと気まずくて」と、娘さんを付き添いに連れてきた方もいらっしゃいました。
当初勤めていた美容室は男性にとって落ち着かない雰囲気だったので、少しでもリラックスしていただけるように端の席を選び、男性のアシスタントをつけるようにしていました。男性は汗かきの方も多いので、ご来店されてからしばらくはクールダウンしていただき、クロスをギリギリまでつけないようにするなどの工夫も必要です。
男性のお客さまは、コンプレックスをもっている方が多い印象です。「パーマかけたら笑われちゃって」とか「こうしたいけれど自分の髪質では無理ですよね」とか「薄毛が気になる」など、悩みの種類はさまざまです。女性なら髪型以外にもメイクなどで外見を変えられますが、男性の場合、髪型は印象を変える唯一の手段といっていいほど重要な部分。そこで失敗してしまうと精神的に痛手が大きいのだと思います。
実際、自分のよさを生かしきれていない方も多く、「私ならもっとかっこよくしてあげられる!」という思いで、お客さまの悩みに真摯に向い、コンプレックスを崩していけるようなご提案を心がけています。
3回のご来店で大きくイメージチェンジを!
接客で重要なのは、お客さまを絶対に否定しないこと。そして、「〜しなくてはだめ」と何かを強制したり、こちらの考えを押し付けたりしないことです。でも、「こうしたらもっとすてきになる」とこちらが思う方向には、もっていきたい。そこで私は3回のご来店で大きくイメージチェンジしていけるよう、時間をかけてご提案しています。
まず1回目のご来店では、お客さまの「こうなりたい」というご希望を第一に考え、ご本人の希望通りにカットします。そして2回目のご来店である程度信頼関係が築けたら、「次回は新しいスタイルに挑戦してみませんか」と提案し、3回目に本当に提案したいスタイルをつくらせていただく、という流れです。
イメージチェンジ後は、家族や恋人にほめられたと、みなさん言ってくださいます。ほめられたのをきっかけに自分でも身なりに気にするようになり、内面的にも変化して、どんどん垢抜けてきます。「彼女ができた」とか「妻がやさしくなった」「ここにくるためのお金だけは妻に許されています」など、うれしいご報告もたくさんいただいて、美容師冥利につきます。
お客さまからは、ヒゲや眉、脱毛など髪以外の美容に関する相談を受けることも多いです。私はめちゃめちゃ女性的でもなく、フラットな性格なので、それも気軽に悩みをお話しいただけるメリットかなと(笑)。友人でもなく恋人でもない、近いようでいて近すぎない立場だからこそ、話せることってありますよね。ちょうどいい距離感で、お客さまの「かっこいい」をサポートしていけたらいいなと思っています。