「黄綬褒章」受賞! 70歳を超えた今でも現場に立つ。赤上喜久子さんの「長く活躍できる美容師」になるための秘訣
若いうちの鍛錬は一生の宝になる。技術とともに人間力も磨き上げること
70歳になった今でもお店で接客をする
-長く美容師をされている赤上さんですが、美容師を辞めたいと思われたこともあったのでは?
辞めたいと思ったことはなかったですね。美容師を始めてからというもの、常に何かに追われている状態がずっと続いているんですが、私にとってはそれがいい刺激になっているみたいです。私自身はいつも美容師としての課題を抱え、それを克服することに一生懸命でした。
-若手の美容師に向けて、「長く活躍できる美容師」になるために大切なことを教えていただけますか?
若いうちに遊んで暮らすか、それとも自分が生きる道を定めてがんばるか、皆に平等に与えられた時間をどう過ごすかで、その先の未来が変わります。遊びたいだろうけれど、若いうちに技術を磨き抜いておけば、それは一生の宝になるんです。その一環でコンクールにも、ぜひ挑戦してみてください。先ほどもお伝えした通り、ものすごい苦しみも味わうと思いますが、そういう経験をしておくと、その先どんなに辛いことがあっても乗り越える力が身に付きますから。さらに、美容師は技術だけじゃなく“人間力”も必要。どこまでもお客さまに寄り添い、その方の髪質や性格、ライフスタイルもすべて知ったうえで、ヘアスタイルを提案しなければ、ファンにはなってくれません。うちのスタッフにも言っていますが、お客さまのお名前はフルネームで覚えるぐらいじゃないと。
-過去にお受けになった取材で「この業界は10年やっても一人前とは言えない。人間性の向上を含め常に学ぶことを忘れてはいけない」とおっしゃっていましたが、この言葉に込めた思いを聞かせてください。
以前、女優の奈良岡朋子さんが朗読劇で、このように言っていました。「四十、五十は洟垂れ(はなたれ)小僧、六十、七十は働き盛り、九十になって迎えがきたら、百まで待てと追い返せ」。この言葉を聞いて、「その通りだな」とつくづく思ったんです。50歳になっても、まだまだ洟垂れ小僧なんですよね。これでいいなんて思っては絶対にダメ。どこまでも学ぶ姿勢を貫くことが、一番大事だと思います。
-赤上さん自身は、引退を考えることがありますか?
足腰が動くうちは、現役でがんばりたいですね。疲れが溜まるときもありますが、あと2〜3年は大丈夫かなと。それまで走り続けます!
- プロフィール
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WOMAN
代表取締役社長/赤上 喜久子(あかがみ きくこ)
栃木県足利市出身。山野美容専門学校を卒業後、美容の世界へ。旦那様の転勤を機に、茨城県の日立市へ。昭和61年に美容室「WOMAN」を設立。地元で評判の美容室へと育て上げ、県内に3店舗を構えるほどに。全日本美容講師会常任創作委員、全日本美容講師会常任運営委員、NPO法人日本美容技術振興センター理事などを務めている。
(取材・文/小林 香織 写真提供/WOMAN)