小さな仕事を全力でできない人に、大きな仕事は来ない! 美容師とヘアメイクで活躍する丸林彩花さん
美容師とヘアメイクとの両立
広告のヘアメイクは、美容室のヘアメイクとは、捉え方やアプローチがまったく違います。広告のヘアメイクではかわいいスタイルをつくるというよりも、設定されたシーンや人物に合わせて求められるヘアメイクを行います。たとえば広告で、ひたいに汗を浮かべる人物のシーンを撮影する場合、グリセリンを水で薄めたり、ワセリンを塗った上から霧吹きをして水をはじかせるということも。誰が教えてくれるというわけでもないので、さまざまな現場で要求されたものを表現するために工夫して技を編み出していくんです。
ヘアメイクの仕事と美容師の仕事の割合は、だいたい、ヘアメイクが週3〜4日、美容師は週2〜3日という感じです。収入的にはヘアメイクだけでも十分やっていけますが、私には、美容師の仕事も必要です。
ヘアメイクの仕事が美容師に活かされることは個人的にはそれほどない気がしますが、美容師をしているからヘアメイクができるということは常に感じます。
美容師としてヘアカットの構造がわかっているから、ヘアメイクの仕事がやりやすくなるところもあります。ヘアメイクの仕事でタレントさんと会話するときにも、美容室のお客さまから聞いた情報に助けられて会話が成り立つことも。私が所属しているサロンのお客さまはファッション業界の方やクリエイターの方が多く、おしゃれでいろいろな知識が豊富な方がたくさんいらっしゃるので助かっています。
美容師とヘアメイクの仕事の楽しみ
美容室は自分にとってホーム。自宅に友人を招くような感覚で、お客さまをおもてなしする楽しみがありますね。それに対してヘアメイクはアウェイですが、心地よい緊張感のある場所です。
撮影の仕事は、参加するスタッフ全員が最高級の材料を持ち寄っておいしい料理をつくるような感覚です。ヘアメイク、スタイリスト、カメラマンなど、いろいろな人が一緒になって、一つのものをつくりあげていく楽しみがあります。もちろん楽しいだけではなく、絶対に失敗できないというプレッシャーや、求められる形にうまくはまらなかったとき、いかに臨機応変に修正するかという緊張感はあります。
ときには周囲とうまくかみ合わないこともありますが、それはそれで、おもしろいんです。ヘアメイクのいいところは、失敗したとしても直せるところです。撮影前には打ち合わせをしますが、当日になってガラッとつくるイメージが変更され、タイトな時間の中で、新たなイメージに合わせてヘアメイクをしなければならないこともあります。ヘアメイクの仕事では、そうした緊迫した場面にも対応できる瞬発力が必要です。それさえあれば、怖いものはないかなと思っています。