美容業界のファッショニスタ、DaBのHIROMIさんに学ぶ、枠にとらわれない新世代美容師の生き方
不得意な部分にもしっかり向き合って
専門学校卒業後、「DaB」に入社して今年で7年目になりました。DaBで働きたいと思ったきっかけは、雑誌などで見かける気に入ったスタイルの多くが「DaB」が手がけたものだったのと、「DaB」が気になりはじめたタイミングで、カットモデルとして声をかけられたこと。そしてその時にオーナーの八木岡と話をする機会があって、すごく素敵な人だなという憧れから、ここで働きたいと思うようになったのです。
入社後は、技術的なハードルが高くて苦労しましたね。学生時代は感覚的にやっていてもどうにかなったけれど、やはり「DaB」は目指すレベルが高かったので、八木岡からは、「HIROMIはエモーショナルな部分は十分。ロジカルなところは、もうちょっと勉強してください」とよく言われました。そこを身につけるのに本当に苦労しました。
スタイリストデビューは焦らずに
スタイリストデビューは入社6年目で、DaBの中では遅かったですね。後輩が先にスタイリストになっていく中「美容師というのは、そんなに簡単な仕事ではない。この仕事ときちんと向き合わなければ」とへんに構えてしまい、最後のところで「お客さまの髪を切る」という覚悟がなかなかできなかったんです。
ヘアスタイルはすごく重要な部分です。たとえば面接や結婚式など、重要な日の前には必ずと言っていいほど美容院に行きますよね。ヘアスタイルを変えることで気分が上がり、精神面に大きく影響していると思うのです。それに、「ファッションの7割は髪型で決まる」とも言われているくらいですから。
なおさらそんな大切なものをデザインする自信が持てず、デビューへの最終チェックを受ける心の準備がなかなかできなかったんです。「よし、できる」と自分の中で覚悟できるようになってようやくスタイリストチェックに臨みました。
スタイリストになるまでには時間がかかりましたが、多くの撮影に参加し、やりたいことに積極的に挑戦していく中で、たくさんの人と出会い、さまざまな経験をさせていただいたこと、自分自身に向き合いじっくり考えたことが、今の仕事に生きていると思っています。
美容師とは五感をフルに使う仕事
私は五感の中でも嗅覚が鋭くて、子どもの頃の思い出も嗅覚で覚えています。入学式や卒業式の香り、持久走大会の香りなど…。お洋服のセレクトも「今日はこういう雰囲気の香りがするから、この服にしよう」と決めることも多いのです。だからいつか、写真から香りが伝わるような作品撮りがしたいとも思っているんですが、カメラマンさんには、「むずかしいね」と言われてしまいました(笑)。
美容師とは一見、視覚的な部分を使う割合が大きく思えますが、実は、五感をフルに使ってお客さまに向き合っているのだと思います。無意識にあらゆる感覚からさまざまな情報を得ることで、「このお客さまはこういう感じが好きだろうな」と想像したり「こんな感じが似合う」と判断していると思うんです。
美容の仕事は、医師やエステティシャンと同じくらい、お客さまとの距離の近い職業です。だからもっと意識的に五感を働かせて、お客さまの見えない内側の部分、パーソナルな部分としっかり向き合っていくことが大事なのではないかと思っています。