30年間指名の絶えない美容師・山田千恵さんの、仕事を楽しむテクニック

マニュアルに捉われず、自分のスタイルをつくる大切さ

 

 

私が美容師になりたてのころは、ちょうど80年代くらい。女性は、女優の浅野温子さんのようなワンレングスのきれいなお姉さんが多く、エッジのきいたモード系のスタイルが流行していました。

 

私もそういうスタイルは嫌いじゃなかったけれど、自分が本当にやりたいものとはちょっと違う感じがして、一時期、「絵のほうがやりたい」と思って迷ったこともありました。上司から「絵の関係の知人を紹介しようか」と言ってもらったけれど積極的に動かなかったのは、やはり美容師の仕事が性に合っていたからだと思います。

 

そうこうしているうちに『olive』『zipper』『cutie』が創刊し、ポップで個性的なおしゃれを楽しむ時代になって、「私の出番がきちゃった!」というできごとが起きました。同期や後輩もデビューしていて私だけまだアシスタントのままだったのですが、あるとき、これまで見たことのないような個性的なファッションのお客さまがきて、「誰が担当する?」となり、いきなり抜擢されてスタイリストデビューしました。そうしてスタイリストとなってからは客数がぐんぐん伸び、売上もトップに。まわりからも「すごいね!」と言われましたが、私自身は成績にはあまり興味がなく、その日が忙しいか忙しくないか、という感覚だけで過ごしていました。

 

先輩の仕事をよく観察して「吸収」すること

 

 

専門学校を卒業して入社したSHIMAで11年働き、その後、八木岡聡さんが「DaB」を立ち上げるとき、オープニングスタッフとして参加しました。私の仕事のやり方は八木岡さんからの影響が大きく、スパッと一気に切る感じも、スピード感も、八木岡さんのアシスタントをしているときに、からだに自然と叩き込まれたものです。

 

八木岡さんはグラデーションカットも、ブロッキングして小分けに切るのではなく、一発で切る。それをはじめて見て「おーすごい!」と思い、レッスンのときに講師の前で試してみたら、「そんなの教えていない!」と怒られました。心の中では、「ちゃんときれいに切れているし、いいじゃない!」と思ってしまったけれど(笑)。

 

アシスタント1年目のときから、そうやって先輩のテクニックを自分のものにするつもりでしっかり見ていました。ただ眺めているだけでは、意味がない。1回見て、「はい、やってみて!」と言われたら、すぐに同じように切れるくらいにしっかりと見るんです。子どもって、大好きなことやインパクトが強い経験を、よく覚えていますよね。一回見たら、全部自分の中に入って忘れない。それと同じことだと思います。

 

テクニックには基本的なマニュアルがありますが、スタイリストはそれぞれ、マニュアルを超えたカット、デザインの仕方を工夫しています。アシスタント時代にはそれをよく見て、いかに自分のものにしていくかが大事なのではないでしょうか。

 

「スピリットをもって輝く自分になりたい」と思うように

 

 

八木岡さんは顔が広く、お友だちには画家や彫刻家、デザイナーなどクリエイティブな仕事をしている方がたくさんいました。イベントやパーティーにも連れていってもらい、スピリットを感じられるような個性的な人たちとつながり、その作品からもエネルギーをたくさんもらいました。自分も、「外見だけではなく、内側から、もっとパワフルにかっこよくなりたい」、美容業界や美容室の中だけで目立つ存在になるのではなく、もっと広い世界の中で、「人間として輝きたい!」と思うようになりました。

 

そうした環境で過ごすうちに、美容師という仕事の魅力は、髪型をデザインすることだけではなく、すてきな人たちとつながれることにもある、と思うようになりました。お客さまから刺激や元気をいただける、すばらしい職業だと思っています。

 

>仕事は楽しみながらやると、やる気がわいてくる!

 

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