「美容師を辞めなくてよかった」ヘアとメイクで自分の好きを表現するk-two谷口翠彩さんが大切にしていること─天職WOMAN─
美容師を辞めてメイク1本に!? 第三者から示されたのは意外な選択肢だった
そんな生活を1年くらい続けた後、メイクの師匠に「メイクの仕事をしたいなら、そろそろ腹をくくって美容師を辞めてほしい」と言われたんです。土日はサロンを休めないですし、かと言ってメイクの現場は私のためにスケジュールを平日に変更してもらえるわけではありません。「あなたはこれからも土日にメイクの依頼が来たら断るの?」と言われて、確かに、と。
そこで覚悟を決めて、会社に以前からメイクの師匠についていること、メイクの仕事をするために店を辞めたいことを伝えました。サロンの上の人からしたら、本当に寝耳に水だったと思います。「ちょっと待って。とりあえず落ち着いて考えよう」と、サロンと付き合いのあるファッション業界に詳しい第三者に話を聞いてもらうことになりました。
そこで言われたのは、「谷口さんは、美容師として今まで積み上げてきたものがあるんだから、それをゼロにしてスタートするのはもったいない。今の時代、自分で発信すれば何でもできるんだから、もう一度自分がどうなりたいのか考えてみなさい」ということ。
確かに、その頃すでにInstagramでの発信が一般的で、自分の作りたいものや作品はそこで発表できる環境がありました。加えて、メイクの仕事は毎日あるわけではないから、美容師としてサロンワークを続けながらメイクの仕事に挑戦する方が、自分にとって安心材料があると思ったんですよね。そこで会社と交渉して、業務委託としてサロンワークを続けながらメイクの仕事もできるように新しい仕組みを作ってもらうことになりました。
その後はアドバイスされた通り、コロナ禍の終わりが見えてきたくらいから作品撮りを始めて、Instagramに投稿をするように。意識していたのは、とにかく自分を知ってもらうために、使ったコスメのブランドをタグ付けして投稿することです。最初はフォロワー数も少なかったですが、続けていくうちに見てくれる方が増えて、徐々に仕事につながるようになっていきました。
それから、20代の頃からお酒の場は好きでよく夜遊びをしていたのですが(笑)、そこで知り合ったクリエイティブな仕事をしている方や制作会社の方とは必ずFacebookを交換していたんですよね。そこでの繋がりが途切れずに続いていたことも、メイクの仕事に結びつきました。
私は、あまりスパスパと物事を決断できるタイプではなくて、何かを始めるにも一歩が踏み出せずにいることも多々あるんです。そんな私を見て、昔からの友人に「いつも悩んでるけど、なんで行動に移さないの?」と言われたことがありました。彼女は私とは真逆で、思いついたらすぐに行動に移すタイプだったので、私のことをじれったく思ったんでしょうね。指摘されたときには落ち込みましたが、こうして振り返ると、美容師を続けながらやりたかったメイクの仕事もできるようになったのは、割り切って物事を決断できない性格のおかげかもしれませんよね。
>師弟関係が物を言うヘアメイクの世界。美容師は自己投資で勝負するしかない!