山好き美容師の田中さんが、息せき切って登ってきた道
「髪の毛切ってきな」という先輩の一言に救われました
今思うと、なんとなく美容師になり、生きることに必死だった自分が変わることができたのは、働いていたサロンのオーナーをはじめとして情熱的な人たちと出会えたからだと思います。なかでもとくに自分にとってターニングポイントになったのは、新店舗の立ち上げを熱い先輩と一緒に任されていたときです。その先輩は、半端な仕事に徹底的にダメ出しするタイプ。ものすごく泣かされてきましたけれど、その中で「ああ、こうすればいいんだ」という気づきがたくさんありました。
新店舗ではお客さまに恵まれていたのですが、自分の力不足で期待に応えられていない気がして激しく落ち込んだ時期もありまして…。ひどいときは朝起きて「仕事に行きたくない」と思っていました。
そんなある日、その先輩が「髪を切ってきなよ」って言ったんです。しかも営業中に。そのときは、なんだかよくわからないまま「じゃあ行ってきます」といって、吉祥寺のオシャレな美容室に入りました。でも、そのお店はカウンセリングも接客もイマイチで、「もっと頑張れないの?」と思ったんですね。申し訳ないんですけど、「これとくらべれば私はすごい頑張っているほうかも…」って感じて、自信がわいてきたんですよ。
もうホント、オーナーや先輩からは厳しい課題も与えられたし、泣かされもしましたけれど、成長のきっかけをたくさんいただいて感謝ですね。
元バイト先にラーメンを食べにいったらまさかの展開に
私が井の頭公園前にお店を出したのは、学生時代にバイトしていたラーメン屋さんに、ふらっと食べに行ったことがきっかけ。地元長野でお店を出そうかなと考えていたのですが、なかなかいい物件が見つからず悩んでいた時期だったんです。それで、店主に独立のことを話したら、「来月で店を締めるから、ここ貸すよ」って言ってくれたんですよ。
その瞬間、ブワッと、そこでサロンをやるイメージがわいてきちゃったんですよ。そのことを働いていたサロンのオーナーに言ったら「いいじゃない。応援するよ」って言ってくださって。ほかにも、お世話になっていたお客さまが、お店のホームページやチラシをデザインしてくれるなど、たくさんの人の後押しのおかげで、「rubono」を作ることができました。本当にありがたいし、今振り返っても感謝の気持ちしかわいてこないです。
人との縁と運だけでここまで来たっていったらそれまでですけれど、もしも、そういう縁や運をつかむことができた理由があるとすれば、とにかく一生懸命働いて、正直に生きてきたからだと思います。そして、感謝の気持ちを忘れないこと。これができれば未来が開けるんじゃないでしょうか。何にも考えてなかった私も、ここまでこれたのですから。
♦♦♦ 応援メッセージ♦♦♦
楽しく思える瞬間は、苦しい坂道の先にあったりする
お金がなくて苦しいとか、売上が伸びないとか、これまで辛いなと思う経験をたくさんしてきました。そういうとき耐えられなくて美容師を辞めてしまう人がいますけれど、私は「なんでやめちゃうの?」って思っていました。苦しさを乗り越えたときに「楽しく思える瞬間」がきっとあります。そこまで頑張ってみてください。
- プロフィール
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田中佑季子さん (たなか ゆきこ)
長野県出身。国際文化理容美容専門学校 渋谷校卒業。「go s go」で12年間勤務後、独立し、井の頭公園前に「rubono」を立ち上げる。2015年9月に、第一子出産予定につき8月から休業。復帰後の「子育てを絡めたサロン運営」をただいま構想中。
http://rubono.com/
(取材・文/外山 武史 撮影/菊池 麻美)
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