“見えてしまう女” 砂原由弥の意地と覚悟 砂原由弥インタビュー 前編-
意地と覚悟でやり遂げれば、ノウハウがついてくる
有名店でいきなり1番でスタートした美容アシスタント人生。いい意味でも、悪い意味でも注目を浴びてきました。「美容師×ヘアメイク」という肩書きは、誰かにもらったものではありません。スタイリストとして売上をスピードでつくり、副店長やプレスを兼務しながら、休み返上、ギャランティは会社に渡して、寝れない生活を送りながら取り組みました。
ヘアメイク、美容師、マネジメント、プレス……自分の役割が増える分、それぞれに使える時間は限られますが、全ての仕事が「普通」とか「そこそこできる」レベルでは、なかなか理解を得られないものです。それが分かっていたから、自分の意思で自由に動ける立場を作るために、周囲への感謝の気持ちを示しつつ、どの仕事も普通の3倍は成果を出すようにしていました。
ヘアメイクの仕事で、どんなにタレントさんに喜ばれても、また、そのタレントさんが大ブレイクしても、そこに対して私にギャランティーが出るわけじゃない。「会社に入ってくれればよし!」と思っていると、「意地」と「覚悟」が生まれるんです。「来年、再来年まで絶対にオファーが続くようにしよう」って。
美容師+αの能力を手に入れるっていうのは楽じゃないですよ。でも、いくつもの役割をやり遂げるなかで、色々な壁にぶつかる分、ノウハウが身に付きます。仕事が細かく見れるようになるんです。
「意地」と「覚悟」を持ってやっていたら、仕事を辞めるという選択肢は出てこないですよ。私はどうにかこうにか「ヘアメイクを砂原さんに任せてよかった」と言ってもらって、クライアントとの時間をつなぎとめることに必死でしたから。
モノゴトを美容の枠で小さくとらえられない
ヘアメイクの話で言えば、クライントは私の技術や人間性だけでなく、任せて「運が上がるか下がるか」まで見ていると思うんですよね。おかげさまで、私が担当させていただいた方はみなさん今、輝いていますし、ブレイクする日を夢見て私を指名してくださる方もいます。
仕事を通じて、芸能人や広告クリエイター、政治家やスピリチュアルカウンセラーなど、本当にたくさんの方と出会ってきました。映画でもCMでもそうですが、世の中の多くの人に触れる作品に携わっている人は、各業界の超一流ばかりなんですね。
その人たちに認めてもらうためには、美容業界で認められているだけではダメで、社会のクリエイターがOKを出すレベルのプロでなくてはならないと思います。その上で、美容という専門性を出していくのが、正しいあり方なのかなと。
芸能界は、本当に厳しい世界です。売れる、売れないが、努力と比例するとは限らないんですよ。一方で美容師は、技術チェックをクリアしていけばデビューできます。練習していれば生き残っていくことができます。
小手先の技術よりも、もっと芯の部分を見つめていかなきゃ、美容師の偏差値は上がらないと思うんです。社会に対してどんな価値を提供できるのかを考えられるようになって、今より一つ上のステージに上がれるんじゃないでしょうか。
後編へ続く
- プロフィール
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UMiTOS代表/美容師×ヘアメイク
砂原由弥 (すなはら よしみ)
ファッション雑誌、美容業界誌の表紙、CM、ドラマ、PV、広告、カンヌ、ヴェネチア、香港、日本アカデミーショーなどの映画祭など多方面に活躍している。(014カンヌ国際映画祭もヘアプロデュースで携わる。)サロン活動に加え、芸能人のヘアメイクも数多く担当。全国各地からのセミナー講師、カットコンテストやフォトコンテストの審査員などのオファーも絶えない。
(取材・文/外山 武史 撮影/菊池 麻美)
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