「美容師、続けられないかも…」 瀬戸際からの復活劇 -BEAUTRIUM 松本美都さん U29次世代美容師-
まさかの救急搬送で2週間入院、3カ月療養…
モデルハントに苦労しつつも、少しずつ技術習得を重ねていたある日、突然の体調不良に襲われました。まともに立っていることもできず、自分でも「私の体に大変なことが起きているのかも」と思うくらいだったので、救急車を呼びました。
搬送先の病院で医師に言い渡されたのは、2週間の入院と3カ月間の療養。さらに、美容師は立ち仕事だから、もう続けないほうがいいかもしれないとも…。両親からも「もう美容師を辞めてほしい」と言われてしまいました。
退院後の数か月は、地元の高知で療養生活。体を休めることはできたけれど、いつももやもやした気持ちでした。「あとカットをマスターすればデビューできるのに…」「親しくしてくださっていたお客さまと会いたいな…」といつも考えていましたね。私が倒れたことを知り、サロンの人たちはもちろん、違うサロンで働く美容師仲間のみんなや、サロンを辞めた先輩など、たくさんの方が励ましのメッセージをくれました。「戻ってくるべきだよ」と。みんなのおかげで元気になることができたし、みんなのおかげで自分が生かされているような気がして、もう一度頑張ろうと思うことができたんです。
病み上がりだったので復帰後すぐは、入院前と同じように働くことはできません。夕方まで働いて、自主的に練習をしていました。とにかく「やるしかない」という気持ちで一杯だったから、本調子ではないなかでも頑張り抜くことができたのだと思います。
今度は私が、みんなに力を貸せるようになりたい
スタイリストになるまで、店内チェック、店長チェック、マネジャーチェックをクリアして、最後は各店舗の主要なメンバーの前で、技術のお披露目会をするのが通例になっています。30人ほどの前でカットすることもあり、お披露目会ではかなり緊張しました。合格したときは本当にうれしかった。私と同じタイミングで4人が同時に受けたのですが、みんな泣いていましたね。
そして、スタイリストデビュー前の最後の難関は、新規客ではなく、家族や親戚、友人など限定で施術をおこない、新人では簡単に突破できない金額の月間売上目標をクリアすること。スタイリストとして稼働できるのは平日のみで、マンツーマンスタイルでの接客です。土日はアシスタント業務をしなければなりません。その状況で売上をあげるのは簡単ではありません。それでも私は、目標を大幅に超える売上を達成することができました。先輩いわく過去最高の数字だったそうです。
きっと、一度は美容師を諦めないといけないくらい追い込まれていたからこそ、絶対にやり切る覚悟があったし、そのことを知っているまわりの人たちも応援してくれたから結果を出せたのだと思います。美容師友達のネットワークを拡げて、お互いに助け合っていたこともよかったのかもしれません。私一人では到底無理。いろいろな人に支えられて達成できたのです。
まわりにいる人たちのおかげで、今の私がいると思っています。だからこそ、スタイリストとして売上をあげていくだけじゃなくて、支えてくれたサロンの先輩、同期、後輩のためになるような働き方をしていきたいです。サロンのための提案や、後輩の育成にも、一生懸命取り組んでいきます。
- プロフィール
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BEAUTRIUM 広尾
Hair Stylist/松本美都(まつもとみさと)
高知県出身。関西美容専門学校卒業後、BEAUTRIUMに入社。アシスタント時代、体調不良になり入院と療養を経験。数か月のブランクと時短勤務を経て完全復帰。2017年2月にスタイリストデビュー。平日のみ、新規集客なし、アシスタントなしで売上をつくるデビュー前の課題では、歴代最高レベルの結果を残す。現在は、スタイリストとして活躍しながら後輩育成にも注力している。
(取材・文/外山 武史 撮影/菊池 麻美)
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