JHA東京エリア賞に輝いた‟アシスタント”の紆余曲折 ― HEARTS/ Double 福田桂子さん U29次世代美容師 ―
次世代美容師として注目される「U29美容師」のサクセスストーリーから、成長するためのヒントを「美容師のタマゴ」へお届けする企画「U29次世代美容師」。第15回目は、アシスタントながら2015年JHAの東京エリア賞に輝いたHEARTS/ Doubleの福田桂子(フクダケイコ)さん。実は、四年制大学を卒業し、企業に就職したこともある少し変わったキャリアの持ち主です。今回はそんな彼女が今に至るまでの紆余曲折について聞きました。
アジアンモデルにモノクロ…作品に驚きを詰め込む
2015年のJHAの東京エリア賞を受賞できたのは私の中での大事件でした。簡単には叶わない、夢のまた夢という感じ。流行りやウケを狙わず、素直に自分のやりたい作品を作ったのがよかったのかもしれません。
JHAに出される作品には、欧米の外国人風のモデルさんに、カラフルな髪色やメイクをのせて、華やかな衣装を着せるものが多いと感じていました。一方、私はモノクロの作品が好きだし、アジア系の顔立ちで、そばかすもあるような女性で挑戦したいと考えていたんです。
JHAの東京エリア賞をいただいた作品では、独特の雰囲気をもつアジア系のモデルさんを、恐竜の背中みたいなシルエットのベリーショートにして、くしゃくしゃになったライダースジャケットを羽織らせました。自分なりのサプライズを詰め込んだんです。
ちなみにその後、受賞がきっかけで業界誌から撮影の依頼をいただいたんですが、思うような作品を作れず、悔しさの残る業界誌デビューになってしまいました…。誌面に自分の名前を出せたことは、本当にうれしかったです。
本気で隠したい! 苦すぎるコンテストデビュー
今ようやく、自分の好きな世界観や方向性がわかってきたところなのですが、最初のころは本当にひどいものでした。
HEARTS/ Double ではアシスタントも参加できるヘアコンテストを定期的に開催していて、初めて参加したとき、本当に素敵な女性にモデルになってもらったのですが、彼女の魅力を損ねるような作品になってしまって…。他の先輩の作品と一緒に、私の作品も飾られるのが、恥ずかしすぎて本気で隠したいと思いました。
「このままじゃやばい!」と心底思ったので、尊敬する先輩の撮影に同行させてもらって、先輩たちが、どんな風にモデルさんに似合わせているのか、間近で見せてもらうようにしたんです。撮影中も営業中も、先輩がどんな風に仕上げをしているのか、じっくり観察しました。
もちろん、ちょっと勉強してすぐに変われるわけではありません。思うような作品がつくれないだけではなく、ちゃんとした美容師になるために、足りないところや必要なことがたくさんありすぎて、いつも気持ちは焦っていましたね。
大学卒業後は不動産会社へ 美容と無縁の生活
お話してきたように私は優等生タイプではないし、美容師になるまで随分と遠回りしてきました。美容とは程遠い生活を長い間送っていたんです。
実家は酒屋で、両親が仕事で忙しくあまり構ってもらえなかったからか、砂遊びとか一人遊びが得意な子どもでした(笑)。小学生時代はマンガ部で絵ばっかり描いていましたし、中学はレッド・ホット・チリ・ペッパーズがきっかけで洋楽にハマっていました。
高校時代は弓道部に所属。単純にカッコいいと思っていたのが入部のきっかけです。ちなみに、メンタルが弱くて勝負どころでいつも的を外していました…。また、父の影響で、私も中型免許を取得しました。家族でツーリングに行くのが父の夢だったようです。
美容に関連するところで言えば、体育祭とかイベントのときにヘアメイクやメイクをしたり、ファッション誌が好きだったりとか、そのくらい。美容師になろうとは思いませんでした。
高校卒業後は四年制大学に進学。観光学部で学んでいたので、観光関係の仕事に就くだろうと思っていたんですよね。ところが、就職活動が上手くいかず、受けても受けても内定をもらえない。「とにかく食い扶持を見つけないと…」と地元の小さな不動産屋さんに就職したんです。
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