輝く美容師の裏側にフォーカス あの人の「裏ガオ」 #6 DADA CuBiC永江浩之さん
DADAとの出会いが、事なかれ主義の人生を変えるターニングポイントに
そんな風に生きてきた僕がもっとも衝撃を受けたのが業界誌の撮影でDADAのモデルをやらせてもらったときのことなんです。当時、僕は美容学校の2年生で、ほかのサロンモデルもやらせてもらっていたのですが、DADA の撮影は今まで経験したことのないような緊張感のある空気感でした。撮影する直前までも、ヘアスタイルに対して妥協せず、スタイリストたちが僕の頭越しで「もっとこうした方がいい」「いや、そうじゃない」とか、言い合っているんです。その気迫がものすごくて、ずっと頭に残っています。
今までの撮影では、なごやかに楽しくという感じが多かったですし、競争をしてこなかった僕にとっては、その仕事に対してのむき出しの熱意を感じたことは、衝撃の体験でした。
でも、不思議とその純粋にアツい人たちの空気感というかポテンシャルの高さというか、本気の世界に魅了されてしまったんです。「なぜそこまでやるのかわからない、でもこの場にいるとすごくワクワクする。自分もこだわりを持った熱い大人になりたい」という心が震えるような感覚――。
それからは絶対にDADAに入りたいということしか考えられなくて、教えてもらった写真集や映画を貪るように見て、少しでも近づきたいと思っていました。
こだわり尽くす環境の中で、自分自身の性格が変わっていった
ものすごい憧れをもってDADACuBiCに入社したものの、事なかれ主義の性格は変わっていなかったので、相当苦労することになりました。
DADAの、一つひとつの物事に対して「そこまでやるんだ」というほどこだわり、「やりきる」っていう仕事の仕方に、自分の性格を変えて合わせていかないといけない。
掃除の仕方一つとっても、厳しかったですね。例えば、自分では鏡を磨き終わったと思っていても、「これでいいって思ってるの?」と言われるんですよ。姿勢そのものについて指摘されるんです。自分の中で作業のように、ある程度綺麗になっていればこれぐらいでいいかと思っていたんだと思います。戦ってまで勝ちにいかない、自分の元々の生き方が掃除の仕方一つにも表れていました。
そんな中、働き続けていて自分にも細部にこだわりを持ち始める変化が現れ始めました。トイレ掃除の担当になったときのことです。当時トイレにシルバーの花瓶が置いてあり、白と黒のプラスチックの花が挿してあったんです。それをどういう風に挿して表現していくか。誰も気付かないかもしれないけど、こだわって見せたくて、アフリカの鳥をイメージしたり、毎日自分の中でテーマを決めて変えていました。
そんなのこじつけだし、どうでもいいじゃないですか(笑)。でも、それを見てオーナーの植村から「今日は何をイメージしたんだ?」って聞かれるようになって、見てくれていたんだという嬉しさと同時にもっといい表現がしたいという気持ちになりました。
接客や技術はもちろんですが、掃除に関してまで半端が許されない環境の中で、何を見てどう感じているのか、それをやることにどんな意味があるのか。尊敬できるスタッフと環境のおかげで、僕もこだわりをもって貪欲になりたいという思いが芽生えたんだと思います。
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