輝く美容師の裏側にフォーカス あの人の「裏ガオ」−第4回MR.BROTHERS CUT CLUB原宿店 店長ジュリアンさん
やりたいことを見つけられたら、あとはのめり込むのみ!
そうして辞める理由を探しつつも続けていく中で、メンズをやりたいという気持ちはどんどん強まっていきました。そんなときに別のサロンの社長から「メンズもやりなよ」という誘いがあって、4年半勤めた原宿のサロンを辞めて、渋谷にあるサロンに移りました。その社長はすごくて、僕はメンズをあんまり切ったことがなかったのに「モデル5人切ったらデビューしていいよ」と言われたんです。面食らいましたが、僕もメンズカットに関してはずっと温めていたものがあったので、意外と形になったんですよ。
それからは、メンズカットにのめり込んでいきましたね。渋谷のお店で1年修行を続けたあとに、今の会社の代表の西森に誘われてメンズの中でもクラシックヘアを追求する道を選びました。
クラシックカットってパターンが限られていて、店内に貼ってあるポスター以外の髪型はない。サイドとトップの長さを決めるだけというのがクラシックカットのロジックで、僕がやりたかったのはこういうことだったのか、と気づきましたね。
考えてみれば、僕はもともと、白いキャンパスに色を足していく絵画よりも、ある物体から形を削り出していく彫刻の方が好きな、職人気質だったんですよ。クラシックヘアと共通するものがありますよね。
苦手だった接客はどうかというと、「話さなくちゃ」というプレッシャーもなく、自分のありのままです。でも、不思議とこの空間にいると、話すことができるんですよ。それも、自分のしゃべりたいことを話すし、人の話はあんまり聞かない(笑)。
それでも自分を受け入れてくれる空間だってことがわかっているから、自然体でいられるということなのかもしれません。
原宿店の店長になったのは、2年前です。うれしかったですし、頑張ろうと思いましたが、実はそんなに店長らしいことはやっていないんです。MR.BROTHERS CUT CLUBでは上下関係や先輩後輩みたいなのがない。年齢的にはあるかもしれませんが、みんな同じフィールドで戦っている「切り手の仲間」なんです。そんなフラットな関係性がお店のいい雰囲気をつくりだしているんだと思います。
<美容学生さん・若手美容師さんへのメッセージ>
人見知りで接客やお客さまとの会話が苦手という人は案外多いと思います。でも、僕は「気にしなくていいよ」と言いたいです。美容師は接客業でお客さんを楽しませるのが大事だとも言われますが、自分に合う人がお客さまになってくれるというのが、究極の幸せだと思います。無理して自分に合わないことをやっても、結局自分の首を締めることになることだってある。僕が、女の子と話す能力をつけるのではなくて、それを捨ててメンズと自然に話せる方を選んだように、自分をさらけ出しても、それを受け入れてくれる場所を見つけられるといいですよね。
- プロフィール
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ミスターブラザーズ カットクラブ(MR.BROTHERS CUT CLUB)
原宿店店長/ジュリアン
1988年生まれ、ドイツ・ミュンヘン出身。14歳で日本に移住し、国際文化理容美容専門学校渋谷校へ。原宿、渋谷のサロンを経てミスターブラザーズ カットクラブの立ち上げに加わる。クラシックヘアに独自の感性を加えた現代的なスタイルで世界中の顧客を魅了している。
(取材・文/須川奈津江 撮影/渡辺 きるけ)