厳しくて優しい、植村隆博という人間

気持ちの変化と余裕が手つきにもあらわれる

 

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-サロンワーク中の植村さんはどんな人だったんですか?

 

サロンワークも常に全力でした。たくさんお客さまと話しをしていましたね。

そして常にサロン全体を見渡しながら仕事をしていました。

サロンワークと言えば、ある時期からカットの手つきが変わりました。久しぶりに話しているといろいろ思い出しますね。

 

-いつぐらいからそう感じるように?

 

2003年に表参道の地下にあるクールな雰囲気の店舗から、日が入り癒し感 のあるフロアへ拡張した時くらいですかね、前までは素早い手さばきで毛を飛ばしながらセニングしていたのが(笑)、早いけどゆったりした手つきで、髪の触り方から変わっていきました。

 

よりお客さま一人一人としっかり向き合おうと植村自身が思っていたタイミングでガラッと空間の雰囲気も変わったから、さらに意識が高まって手つきにも表れていたのかな? あくまで僕個人が客観的に見ていての想像ですが。

 

そういえば、同じタイミングでクリエーションに対するアプローチも変わってきました。ジオメトリックで緊張感のある作品から、いい意味で力の抜けた上質な遊びを作品から感じられるようになってきたんです。もちろん時代性もあると思いますが、常に 自分を進化させようとする気持ちが強かった人ですね。

 

 

-クリエーションの現場で覚えていることはありますか?

 

クリエーションに関してはいつも広い視野とアイデアをもっていましたね。そして本当に細かい。撮影の時はもちろんですが、ショーの時なんかは最後の最後、モデルが出る直前までスタッフを怒鳴り散らかしながらスタイルをつくっていました。自分自身のクオリティに対して絶対に妥協しなかったですね。

 

また、植村は自分のやること、過ごす空間のすべてがデザインという意識が高 かったので、サロン内のオブジェの位置とか本の並びのちょっとした違いや掃 除が行き届いていない部分にもすぐ気がつくんですよ。

サロンでフライヤーなどを作る時も、「この線をあと2mm右に移動して!」なんてmm単位の修正指示は日常茶飯事でした。それをやっていたスタッフは大 変だったと思います。

 

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植村氏が制作に尽力したヘアデザインのテクニック集、『I』シリーズ三部作。残念ながら左の『I FAS』※の完成を待たずに植村氏は逝去。最後の制作は病床から古城さんに託された。「自分の名前じゃなくて、植村の名前で出版される最後の1冊だから絶対にいいものを作ろうと思ってました。約1年、このI FASの制作に捧げてましたね」 ※女性モード社/刊 植村隆博氏[DADA CuBiC]/著

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「内容だけじゃなくて、紙から製本から何から何までこだわっていて、本当にクオリティが高いんですよ。」

 

-今までのお話を聞いて、植村さんと古城さんに強固な信頼関係があったと感じますが、ご自身ではどう思われますか?

 

僕を認めてくれるようになってきてからは、同じスタンスで接してくれるようになって、いつの頃からか植村に弱音も吐けるようになりました。師匠に弱音を吐くなんて信頼していないとできないし、向こうもこちらを認めていないと弱音なんて一蹴されてしまう。お互いいろんなことを本音で話せる関係なれたと思います。何よりも、僕自身の才能を見つけ出してくれ、育ててくれたことに感謝しています。どんな環境で、誰から学ぶかが本当に大切ですね。

 

 

-では最後に植村さんから教わったことはなんでしょうか?

 

最後に教えてもらったこと……うーん、なんだろう…。いっぱいあるんですよね。せっかくのインタビューなんで、これ! といった答えが言えればいいんですけど…。多すぎて…。最後ではないですが、

 

絶対的な自信を持つこと

強くあれ

 

いつも人間的な部分を僕に教えてもらいました。

 

 

プロフィール
DADA CuBiCアートディレクター 古城隆

2000年DADA CuBiC入社。02年三都杯グランプリ受賞。04年よりD.D.A.講師を務める。これまで多くの業界誌にて連載ページ・作品ページを担当。2011年には植村との共同著書「Basic Cut Bible vol.1」を新美容出版㈱より発刊、2013年には「正確なフォルムコントロールのための スライス徹底マスター」を㈱女性モード社より発刊。現在はサロンワークの傍ら、ショー・セミナー等の教育活動も積極的に行っている。

 

(取材・文・撮影/高橋 優璃)

 

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