音楽との純粋な向き合い方ってどんなんだっけ? LECO内田聡一郎の仕事論 −カセットテープ専門店“Waltz”の店主と語る、音楽の力とは−
キュレーションやエディット作業が当たり前に行われていたのがカセットテープ
―内田さん、先ほど海外バンドをよく聞いていたといっていましたが、そこからテクノとかハウスにどうやって流れ着いたんですか?
内田:最初はクラブに連れて行ってもらって。
そのときは正直良さが分からなかったんですよね。でもそこにいる人たちのファッションや立ち振る舞いがものすごくかっこよくって、バックボーンを知りたいって思った。
で、その人たちの聞いている音楽は絶対にかっこいいはず! と聴き続けていたらハマっていきましたね。
角田:僕も坂本龍一さんがラジオDJでオススメしていた楽曲は必ず聞いていました。自分がかっこいいと思っている人がセレクションしているものは信用していますね。
内田さんはDJもやられているんですよね?
内田:はい、そうなんです。
―DJにハマるきっかけはあったんですか?
内田:DJの師匠がいるんですが、DJをはじめるときに、どうやってはじめるんですか? と師匠に尋ねたら、
「好きな子にあげる10曲を真剣に考えろ、まずはそれからだ」
と言われて、めっちゃカッケー! って。どんな曲を届けるかを考えることがDJの役割って知って、最初はDJ=スクラッチする人って思っていたから(笑)、目からウロコでしたね。その言葉が僕のDJの原点になりました。
角田:それっていわゆるエディット(編集)作業ですよね。
僕は中学・高校時代に友人に頼まれてオリジナルのミックステープを作ってみんなと共有していました。カセットテープには必ずインデックスカードが付帯されているから、そこに曲名を書いたり。
内田:うわ〜懐かしい。あの背表紙のほっそ〜いところに、タイトル書いたりしてましたね。
角田:(テープが)細ければ細いほどかっこいいとされる時代があったので、細くて薄いテープも発売されたり。
内田:覚えてます、覚えてます。
角田:カセットテープ時代って、みんな自然と編集・キュレーション作業を行なっていたんですよね。先ほど坂本龍一さんが聞いている音楽を信用していると言いましたが、それもキュレーション。キュレーションされたものを自分で編集して、みんなで共有するっていうことがカセットテープで自然と行われていたんですよ。
内田:買ったアルバムから自分のお気に入りの曲をピックアップして、テープにダビングして編集してましたね。懐かしいな〜。
―録音ボタンと再生ボタンを同時に押してましたね(笑)。
※何を言っているか分からない10代〜20代は30歳以上の先輩に聞くかググってみてください。
内田:そうそう。
角田:編集作業をするために、昔は1枚のアルバムやテープを聴き込んでいる人が多かったのですが、今はサブスク(※サブスクリプション=定額制音楽配信サービス)の登場によって、アルバム単位ではなく、曲単位で聴くことが当たり前になっていますよね。
内田:そうかもしれないです。そういえば今アルバムを全曲通して聴きこむことってほとんどないかも。