落ちこぼれ中学生が”圧倒的”に人と向き合う“ハッピーソウルマン”になるまでの話 -GOALD/ハイスタイリスト 今井崎 知希さん U29次世代美容師-
天狗の鼻をへし折られ、クロスの巻き方から学び直した
中村さんのアシスタントをしていたときは、自分が中村さんの分身だと思ってやっていました。中村さんのように細部までこだわり、お客さんを幸せにできるか考えていたんですよ。正直、僕は1年目でカット以外の仕事はできているつもりになって、ちょっと天狗だったんです。その鼻をボキィ! と折られました。クロスの付け方、タオルの巻き方など、全てに置いて指摘をもらい、全てイチからやり直しです。中村さんの「俺はミシュランの3つ星のレストランと同じ美容師だから、お前も髪1本までこだわる美容師にならなきゃ駄目なんだよ」という言葉がぶっ刺さりました。
OCEAN TOKYOをやめて、中村さんと一緒にGOALDでやると決まってから、2カ月間の準備期間があったんですよ。中村さんからは「オープンと同時にスタイリストをやってくれ」と言われていて。僕も少しでも早くカットを覚えてお客さんを幸せにしたいと思っていたので、体力とか睡眠とかそっちのけで、もう気持ちだけで体が動いているくらいまで自分を追い込んで練習しました。でも結果として僕は、オープンと同時にデビューしなかったんです。
人頭を切っていなかったのでまだ自信がなくて、中村さんに「ザキ、いけるの?」と聞かれたとき「いかなくちゃいけないです」って中途半端なことを言ってしまって。だから「僕の口からこんな言葉が出る以上、いけません。待ってくれている人たちのために、中村さんが僕に自信を持って任せてくれる状態でいきたいと思っています」と伝えて、またイチから練習をやり直しました。
ありがたいことに「あのときセットしてくれた人、どこに行ったんだろ?」みたいな感じで、僕のことを調べてくれているお客さんがたくさんいたので、デビュー初月から最高のスタートを切ることができました。中村さんのお客さんだった人が、僕を指名してきてくれることも。僕のことを知らなかった人も、「Instagramを見て、ザキさんに惹かれてきました」と言ってきてくれたこともあります。
ただ、技術面での不安もありました。中村さんからは「ザキ、お前は人としては大丈夫。お前は最強だ。でも、技術が追いついていない。美容師は髪をちゃんと切ることができるのが大前提だから」と言われて、また全ての技術をイチからやり直しました。
ハッピーにするため日本全国、さらに海外へ…死ぬまで止まるつもりはない!
デビュー後の3カ月で、スタイリストの上で、カットの料金も上がるハイスタイリストの昇格条件をクリアしました。ただ、正直言って、売上をつくるためにちょっと走ってた部分もあったんです。カットも上手くなったし、自信もあるけど、お客さんが帰るときの笑顔は最初の頃の方が見えてたな、って思ったんです。
なので、中村さんにも「自分のタイミングでハイスタイリストに行きます」と伝えて準備しました。そして次第に「GOALDではなく、今井崎さんと働きたいと思ってきました」と言ってくれる学生さんや、「今井崎さん、これからも一生お願いします!」と言ってくれるお客さんが現れたんですよね。僕はその気持ちを倍返ししたいと思ったし、それがハイスタイリストとしてやっていく決意につながりました。そうして2020年10月1日からハイスタイリストをさせてもらっています。
僕は、目の前のお客さんと本気で向き合うことと、自分自身がキラキラ輝き続けることが、僕に愛を注いでくれた人たちへの恩返しになると思っています。「有名になる」とか「日本一のカリスマになる」とか、正直どうでもよくて。本気で向き合っていたら、勝手に有名になっちゃうと思うし。
あと、僕は「ハッピーソウルマン」って呼ばれているんですけど、僕と働きたいって言ってくれる人たちを集めて、みんなをハッピーにできる箱を、東京と名古屋にドーン! と出したいんですよね。東京と名古屋を行き来して、たくさんのお客さんをハッピーにしたい。そして、死ぬまでに全国をたくさん回りたいし、海外にも行きたい。自分からみんなに会いに行きたい。だから、やっぱ死ぬまで僕は止まれないですね。
- プロフィール
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GOALD
ハイスタイリスト 今井崎 知希(イマイザキ トモキ)
愛知県出身。中日美容専門学校卒業後、OCEAN TOKYOを経てGOALDへ。代表の中村トメ吉氏も認める愛弟子の一人。2020年10月1日からハイスタイリストとして東京と名古屋で活躍している。座右の銘は「あほの可能性は無限大」。
(文/外山 武史 撮影/菊池 麻美)