地味男子、大学中退と読モを経てボブの専門医に -Bella Dolce 日野 達也さん U29次世代美容師-
「最後だと思ってここでやってみたら」と誘われBella Dolceに加入
美容専門学校に在学中はモデル活動を優先し、人脈づくりに励んでいました。撮影現場で実力のある美容師さんと出会い、成功のヒントをつかみたいと考えていたからです。その当時知り合った美容師さんは今も活躍中ですし、発信力がある方もたくさんいるので、当時築いた人脈は、今も僕の財産として生きています。実力のある美容師さんたちの集まりに呼んでいただき、自分も目線を上げることができました。
ただし、最初に勤めたサロンは3カ月と持たずに退社…理想と現実のギャップに苦しみました。モデル活動を通じて優秀な美容師と出会っていたからこそ、それとはほど遠い場所にいる自分が受け入れられなかったのかもしれません。
今だから話せますが、マイナビ転職のサイトに登録し、一般企業への転職活動の準備をしていた時期もあります。本気で美容師を辞めるつもりだったんです。そんなときに、撮影で知り合ったBella Dolceのディレクターが、「じゃあ、最後ウチで頑張ってみてダメなら辞めれば?」と声をかけてくれたおかげで、今があります。Bella Dolceのなんでも自由にやらせてくれる環境が、僕に合っていたのかもしれません。
アシスタント時代から撮影に興味があって、TwitterやInstagram、Facebookに作品をアップしたりしていましたね。つたない技術でつくったものなので、今は削除していますが…。この界隈で働いているアシスタントを10名集めて、みんなでスタジオを借りて撮影会を開いたこともあります。スタジオを借りるのはお金がかかるけれど、10人なら一人頭4000円くらいで済みます。アシスタント時代はお金がないから、そういう風に工夫していました。ちなみに、当時撮影会に参加したメンバーたちは今も美容師として活躍しています。
心に火をつけた一言「モデル上がりの美容師は大成しない」
モデルをやっていた経験があったので、僕には少し高飛車な部分もあったと思います。デビュー前に立てた目標は「初月売上100万円」。これを達成できれば、美容師としてのブランドになると思っていたんです。それまでお世話になったモデルさんや、友人などにかたっぱしから連絡し、「全力を尽くすので任せてください」とアピールしました。ところが実際は30万円しかいかず、翌月はさらに売上が落ち込みました。
その当時の僕は、「お客さまのために一生懸命やります」と必死に自分を売り込んでいました。でも、お客さまが求めているのは、「必死さ」や「売り込み」ではないから、当然、失客します。挫折を感じていたときに、同年代の子の言葉が頭をよぎりました。
「モデル上がりの美容師って成功しないんだよね」
その言葉は僕に向けられたものではないかもしれません。でも、そのおかげで「絶対に見返してやる!」と闘志に火が付いたんですよね。
その当時、Instagramで有名になった美容師さんがポツポツと出始めていました。それを見た先輩が「ボブに特化した人がいないからやってみたら」と僕に提案してくれたんです。面白そうだと思ったので、早速ボブの作品や動画をどんどんアップしていきました。それがキュレーションサイトや台湾のメディアに取り上げられたりして、自分でも驚くくらいのペースで新規のお客さまが増え始めたんです。デビューした年の年末にはデビュー初月の約6倍に相当する180万円を達成。今も月平均で50名、年間600~700名の新規のお客さまがいらっしゃいます。
表参道のボブの専門医、誕生
ご存知の通り、ボブは繊細な髪型でわずか数センチ、もしくは数ミリ切りすぎただけで、表情の見え方が変わってしまいます。僕の元にいらっしゃるお客さまも、自分に似合うボブに出会えなかったという方が少なくありません。だから、お医者さんのように、お客さまの髪質やキャラクター、ライフスタイル、ファッションなどを綿密にカウンセリングしてから施術しています。
僕のハサミの力でできること、できないこともしっかりとお伝えして、お互いに「これで行きましょう」と納得することが大事なので、合意に行きつくまでの時間は惜しみません。もちろんカットに関しても、難しい髪質のお客さまの場合は1時間くらいかけて、慎重に切ることもあります。そのため、Instagramでも、時間に余裕をもってお越しいただくようにお願いしているんですよ。
ボブというヘアスタイルは奥深いです。やればやるほど新しい可能性が見えてきて面白い。それに僕は誰にでも似合うボブがあると確信しています。これからも、ボブを突き詰めて、「ボブの専門医」として、もっと多くの人に知っていただき、仕事の幅も広げていきたいですね。
- プロフィール
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Bella Dolce
スタイリスト/日野 達也(ヒノ タツヤ)
兵庫県神戸市出身。エビスビューティカレッジ卒業。公認会計士を目指して上京し、大学に通うも1年で中退。エザキヨシタカ氏に影響され美容の道へ。学生時代はモデルとしても活躍。専門学校卒業後は都内1店舗を経て、Bella Dolceに入社。ボブに特化したデザイナーとして主にInstagramでセルフプロデュースをおこない、集客に成功。年間600名から700名の新規客が、極上のボブスタイルを求めて日野氏にもとに集う。
(取材・文/外山 武史 撮影/菊池 麻美)
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