アシスタント時代、撮影現場へ行くためにしたこと

アシスタント時代は「めちゃくちゃ練習して、めちゃくちゃ遊ぶ」という生活を送っていました。夜中の2時とか3時まで練習することもよくありましたが、練習は好きなので全然苦痛ではなかったし、暇な時間があるなら練習したいと思っていたくらいなんですよ。同期にも頑張り屋さんがいたので、夜中に練習が終わったら「ラーメンでも食べて帰ろっか」と寄り道したりしていました（笑）。今思うとよくやっていたなと思います。

美容師になる前から、撮影の仕事をどうしてもしたいと思っていたので、朝10時から11時くらいの撮影終わりのモデルさんを狙ってモデハンして、そのままサロンに連れていく、ということもしていました。撮影の仕事を持っている先輩スタイリストが、そのモデルさんと使いたいという話になったら、「私も連れていってもらえますか？」とお願いするんです。そういうことを繰り返しているうちに、先輩スタイリストが私を撮影に連れて行ってくれるようになりました。

撮影のためにモデハンを頑張るというのは、「ただ撮影をやりたいと伝えるだけじゃダメ。自分ができることをしていかないと」という先輩のアドバイスがきっかけです。つまり、先輩の撮影に対して、どんなメリットを貢献ができるかアピールしないとダメだということですね。

撮影で求められる役割は、モデハンのほかに衣装スタイリング、メイク、そしてヘアです。ヘアは先輩が主役だから、ヘア以外で私が貢献できるスキルを身につけるために、メイクが得意な先輩から、撮影向けのメイクのコツを習いました。

スキルがあって尊敬できる先輩が近くにたくさんいて、引っ張ってもらったから今があると思っています。

「ショート代表」としてサロンの外に出るのが仕事

撮影に参加させてもらっていたおかげで、スタイリストデビューしてから、先輩や雑誌の編集さん、カメラマンさんなどの推薦で、撮影の仕事をもらえるようになりました。ヘアカタだけでなく、女性誌や男性誌にも載せてもらっています。「ショート代表」という打ち出しのおかげで、今もショートの依頼が多いです。ただ、戦略的にやっているのではなく、純粋に、ショートが似合うかっこよくて知的な女性を作りたいんですよ。ショートが好きな女性って、個人的には美意識が高いと思います。その分、美容師に求める技量も高いのかもしれません。だからこそ、ショート代表を名乗る意味があるのかな、と思っています。

結果として、「なんでもやります」というよりも、「ショートが得意な美容師」というイメージ付けができたから、雑誌の編集さんなども依頼しやすいのかな、と感じています。「ショートヘアの企画だからショート代表の子にお願いしてみようか」みたいに、思い出してもらいやすいのではないでしょうか。

NORAを辞めてLONESSに転職したのは一つの場所しか知らないより、新しい環境で力試しをしたいと思ったんです。お世話になったサロンと先輩を裏切るようなかたちになるのは嫌だったので、何度も話し合いをしました。

LONESSはNORAを先に辞めた片山がオーナーを務めています。なので、全然知らない顔だらけのところからスタートしたわけではないのですが、オープニングから入っているスタッフとの間に少し距離を感じていました。やはりオープニングの苦労を味わっているメンバーは連帯感があるし、半年くらい遅れて入った私は、なんとなく居場所を失ってしまったような感覚に陥ってしまったんです。そこで、自分のポジションを確立して、サロンになくてはならない存在になりたいと考えて、サロンワークだけではなく、どんどん外に出ていくことにしました。もともと、撮影に対するモチベーションは高かったですし、アシスタント時代から経験を積んできたからです。

ありがたいことに、これまで撮影でお世話になったかたや、飲み会などで知り合ったみなさんからたくさん撮影や監修などの仕事をいただき、今とても充実しています。私は、美容師の活躍の場はサロンの中だけではないと思っているので、これからも撮影に限らずさまざまなことにチャレンジしていきたいです。

プロフィール

LONESS
スタイリスト／原 倫子（ハラ リンコ）

東京都出身。山野美容芸術短期大学の美容保健学科を卒業後、表参道の人気店「NORA」で美容師生活をスタート。アシスタント時代からメイク担当として撮影現場でスタイリストをサポート。スタイリストデビュー後は、ヘアカタログをはじめ、ファッション誌、メンズ雑誌などでも活躍。2016年にLONESSに入社し、「ショート代表」として社外へ情報発信している。

（取材・文／外山 武史　　撮影／菊池 麻美）

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