誰とも被らない「自分枠」を確立させたい -WARSAW 畠山 遥さん U29次世代美容師-
音楽やファッションへの興味が、自分の武器に
入社2年半でスタイリストデビューしましたが、最初の頃はこの仕事でやっていけるという手ごたえ的なものはなかったし、売上が思うように上がらずに悩んでいました。それにウチのサロンは、集客にホットペッパーなどは使っていません。雑誌やインスタグラムなどのSNSが中心なんです。だから、自分の作品をそういうところで見つけてくれたお客さまが、僕のもとにやってきてくださったときは素直にうれしかったですね。
仕事が少しずつ軌道に乗り始めると、ファッションスタイリストやアパレル勤務の方、美大や美容専門学校の学生やその友達など、リアルのつながりでお客さまが増えていきました。僕の作品や見た目が気になる人って、やっぱり感覚も僕と似ているから、信頼してもらえるようです。そして、ほとんどの人がリピーターになってくれる。
お客さまにはそれぞれ「なりたい自分」があるものだと僕は思っています。だけとそれを言葉で表現できる人は少ない。たとえば、「70年代のファッションが気になっている」とか「今、80年代のNew waveが好き」とか、なにかやりたいことがあるわけです。そこを、好きなファッションや音楽などを聞き、お客さまの「なりたい自分」のイメージを膨らませて、ヘアスタイルのなかで再現していきます。
「なりたい自分」を叶える引き出しが多いのは、やっぱり自分自身がさまざまな音楽やファッションが好きで、実際に見たり、聞いたり、着たりしてきたからだと思います。こういうものって、ネットで簡単にパクれるものじゃない。できるだけ本物に触れて、インプットしてきたからこそ、お客さまの服装やメイクからどんなものが好きか推察することができます。「70年代が気になっている」とわかったら、そこから細分化してその人にあうスタイルを当てはめてあげる、と言った感じです。
自分の好きなことを突き詰めてきたから、今がある
ファッションや音楽が起点の僕の発想法は、普通の美容師さんとは少し違うかもしれません。だけど僕は、もともと万人に受け入れられるようなスターになりたいと考えたことはなくて、自分のスタイルで着実にお客さまを増やして、そこから僕のことを知ってくれる人が増えていったらうれしいと思ってやってきました。
WARSAWは少し、アンダーグラウンドな立ち位置にあるサロンだと思っています。この感じはサロンの個性として残しつつ、もう少し興味を持ってくれる人を増やすことが今後の目標です。
ちなみに、僕は見た目がこんな感じだし、ファッション誌などにも出ているから、「出たがり」だと思われがちなんですが、そんなことはありません。好きな音楽を掘り下げたり、音楽に関連するジャンルのファッションや髪型を調べたりして、好きなものを突き詰めているうちに、自然とこうなりました。なので、これから美容師として個性を出していきたいという人には、「誰かを追いかけるのはやめなよ」と伝えてあげたいですね。
トップを独走している美容師を追いかける2番手や3番手は、トップより安いとか、予約がとりやすいとか、どうしても妥協しないといけない点が出てくるもの。だったら、僕は自分の好きなスタイルを貫きたいと思う。そうすることで、「誰にも取って代わられることのない美容師」になっていきたいですね。
- プロフィール
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WARSAW ワルシャワ
スタイリスト/畠山 遥(ハタケヤマ ハルカ)
東京都出身。国際文化理容美容専門学校卒業後、青山のサロン一店舗を経てValentine 原宿(後にWARSAWに改名)へ。2年半のアシスタントを経てスタイリストデビュー。独特の世界観を持った美容師として注目されるだけでなく、そのライフスタイルもメディアに取り上げられている。妻は坊主頭が印象的なモデル畠山千明さん。夫婦でメディアに取り上げられることも多い。
(取材・文/外山 武史 撮影/菊池 麻美)
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