イチ美容師として成功することだけがゴールじゃない ーH[eitf] 王子田 隼さん U29次世代美容師 ー

 

「ライバルは二人、ここならいける!」店長狙いで入社

 

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就職活動をする前に知り合いのサロンのオーナーに誘われて、そこで働くつもりでした。そうしたら、友人から、「一店舗しか見ずに決めるのはどうかと思うよ。H[eitf]っていうサロン、合うと思うから受けてみな」とすすめられたんです。お客さんとして行ったら、すごくいい感じで、その気になってしまったんですよね。

 

そのころから僕は、やるからには上を目指したいと思っていて、最短で店長になりたいと思っていました。当時のメンバーは、スタイリストが4人でアシスタントが2人。先輩たちが何人か独立することを考えると、30歳前にはトップに立てるんじゃないか…と感じたんですね。しかも、お店は雑誌掲載常連の有名店。チャンスだと思いました。履歴書にも店長を目指していると書いたんですが、おそらく珍しかったんじゃないでしょうか。

 

無事採用されて、美容師生活がスタート。ところが…働き出してすぐに激しい手荒れに悩むことに。全身に湿疹が出るような状況で、夜もほとんど眠れない。こうなると悪循環で、日中も体調が悪くてしかたがない。オーナーの配慮で1週間の休みをいただいたのですが、少し休んだからといって治るわけもなく…。辞めるしかないのかな…と思っていました。

 

本当に心身ともにギリギリの状態で、何か一つ引き金があれば辞めていたと思います。ところが社長から「手荒れの苦しみを乗り越えた人は、その後、突き抜ける可能性がある」と励まされ、吹っ切れました。手荒れのためシャンプーはグローブをつけないとできません。でも、その分、誰にも負けない努力をしました。

 

アシスタント時代に父親になり、即100万円プレイヤーへ

 

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美容師を辞めようと思ったことは一度だけではありませんでした。アシスタント時代に彼女の妊娠がわかり、「土木作業員とバーテンダーでお金を稼ぐので辞めます」と店長に相談したことも。すると、「お前、それは土木作業員さんに失礼だし、誰にも負けない努力でスタイリストになれよ!お父さんがカッコいい美容師のほうが子供だって喜ぶだろ!」と説得されました。その一言で一念発起し、出産までに100万円スタイリストに。こうやって振り返ると、いろんな人の支えがあって今があるんだなぁと実感しますね。

 

スタイリストとして順調に売上を伸ばしていたタイミングで、当時の店長と副店長が同時に退職。すかさず立候補して副店長になりました。ただし、新店長は独立を視野に入れて働いていたため、いなくなってもサロンがまわるように、早くから店長業務を僕に引き継いでくれたんです。だから僕は美容師としてのキャリアの半分以上で、マネジメントの経験を積んできています。

 

僕は正直、これといった強みはありません。イチ美容師としては、心から満たされたことはないかもしれない。でも、いい意味で上がダメだと下が伸びるんです(笑)。

 

今はどんなスタイリストでも、100万円、150万円と売上げられるように教育しています。そして、「誰一人も辞めさせたくない」という想いで、働きやすいサロンづくりに励んでいるところ。給料も環境もよければ、「美容師っていいな」ってみんなが感じるはず。そういう方向にもっていきたいんです。

 

グループ内で売上1位をキープできている理由

 

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おかげさまで、僕が店長を務める原宿店は、グループ内で一番の売上をキープしています。もちろんこれは、スタッフの力が全て。僕はスタッフが力を発揮できるようにベストを尽くしているだけです。

 

ただ、ひとつ得意なことがあるとしたら、スタッフとの関係性づくり。語弊を恐れずにいうと、基本的に男と女は別の生物。男性はある程度、上下関係を重んじる体育会系の考え方で大丈夫。でも、女性の場合は違うんです。

 

美容業界は女性が活躍する業界だし、仕事もできるし、的確な意見を言える人が多い。だからそこを大いに尊重して、いい意味でやさしく接する。いざこざが起こったら、すぐに女性の副店長と連携して、ヒアリングをする…やはり性別が違うと、考えていること、感じていること、全く違います。このギャップを理解できるかどうかが、店舗運営のカギであり、美容師として成功するヒントのような気がします。男性の場合は特に、です。

 

そして、僕の一番の願いは、「スタッフが辞めないこと」。みんなそれぞれの想いを胸に美容師を志したのだと思います。それを支えてくれる人たちが周りにいるはずです。美容師を辞めるというのは、本人だけの問題じゃない。周りの人の期待を裏切ることにもなります。僕は野球を辞めたことで家族を悲しませてしまいました。

 

僕と一緒に働いてもらうからには、同じような想いをしてほしくない。だから僕は、「スタッフが辞めないサロンづくり」にこだわっています。一人ひとりが成長を実感しながら、それぞれの夢を叶えていく。そんなサロンをつくるのが僕の役目なんです。

 

 

プロフィール
H[eitf]
店長/王子田 隼(おうしでん はやと)

東京都出身。高校は進学校で大学進学を考えるも、「普通のサラリーマンになりたくない」という想いから美容師の道を選ぶ。国際文化理容美容専門学校国分寺校卒業後、H[eitf]に入社。その当初から有名美容師ではなく、有名店を率いる店長を目指す。20代前半で副店長、20代後半からは店長をつとめ、「スタッフが辞めないサロン」を目指して、店舗をマネジメントしている。

(取材・文/外山  武史  撮影/菊池 麻美)

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