専門時代の涙と6年半の下積みが今につながっている ーDADA CuBiC 新田みなみさん U29次世代美容師 ー

難関だったDADA CuBiCの3次試験

 

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就職先は東京志望ではなかったのですが、採用のタイミングの関係で、都内の有名店を10社くらいまわりました。そのなかでDADA CuBiCに入ったのは、自分の好きなヘアスタイルをつくっていたからです。

 

当時は面接が4次試験まであって、3次試験はモデルハント、4次試験はサロンワークという実践的な内容。一番印象的だったのはモデルハントで、ラフォーレ原宿の近くで頑張って声をかけて、写真をとらせていただき、なんとかクリア。プレッシャーを感じましたがリアルにサロンワークを感じられてよかったです。

 

念願のDADA CuBiCに入ることができたのですが、最初の3年間は毎日のように辞めたいと思っていました。大きな撮影のお仕事や、ヘアショーをいただいているサロンなので、いろんな準備でパツパツになってしまったことも…。自分の時間がないのにやることは満載で、毎年のように「辞めたいです」と先輩に相談していました。

 

母にも弱音を吐いてしまっていたのですが、「3年間は続けなさい」と応援してくれまして。3年間経ったときには、モデルハントも要領がつかめるし、先輩の意図することも見えてくるし、辛くなくなっていたんですよね。

 

スタイリストになるまでには6年半かかりました。一切の妥協なく、先輩たちがチェックしてくれたことには本当に感謝しています。声を荒げることなく、的確に、冷静に指摘してくれた先輩たちの教えが忘れられません。

 

「ハサミノチカラ」で美容師であることの喜びを実感

 

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デビュー後はカットモデルさんがお客さまとしてきてくれたり、アシスタントの頃からよくしていただいていたお客さまから指名をいただいたり、さらには不在の先輩スタッフの代わりに担当させていただいたりしていました。そこから少しずつ、少しずつ、仕事を広げていった感じです。今はSNSを上手に使って集客する美容師さんが多いですが、私はとにかく地道に、ひとつの仕事がまた新しい仕事を生むのを信じてやってきました。

 

デビュー後半年くらいのころに参加した『ハサミノチカラ』プロジェクトも鮮明に覚えています。フィリピンの孤児院でのボランティアカットしたのですが、髪を切ったあとの子供たちの表情がとてもキラキラしていて感動しました。昔から子供に関わる仕事に興味があったので、美容師の仕事と好きなことを結びつけることができ、心から喜びを感じました。いまでも辛いときは、そのときの気持ちを思い出しています。

 

2年目、3年目くらいからは、ヘアカタログや雑誌、業界誌のお仕事もいただくようになりました。やはり、人気のヘアモデルさんは、いろんなサロンを手伝っていますし、私も同じモデルさんにお願いしていると、スタイルがどことなく似てしまいがち。そのときどきで、「似合わせ」「質感」にこだわって、少しでも自分らしさを出せるように意識しています。

 

「みなみらしいね」と言われる仕事をしたい

 

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ようやく自分の強みも見えてきました。自信を持つきっかけになったのは、植村※の著書、『IFAS』の出版記念。仙台、東京、名古屋、大阪、福岡で開催するかなり大きなセミナーイベントだったのですが、そのなかで私がモデル10人分の洋服や小物を用意し、10バリエーションをつくりました。

 

トータルバランスに徹底的にこだわった結果、見てくださった方からの評判もよく、業界誌でも取り上げていただくことに。自分の可能性が広がった瞬間でした。まだまだ勉強中ですが、トータルコーディネートを念頭に置きながら、「みなみらしいね」って言われる仕事をしていきたいと思っています。

 

今の私があるのは6年半のアシスタント生活のおかげです。撮影のために衣装や小物を用意するのはアシスタント時代からずっとやっていたことですし、先輩たちの仕事を見ながらヘアだけではなくファッションもメイクも含めたトータルコーディネートで勝負したいという気持ちをずっと持ち続けてきました。

 

最初の3年で辞めなくて本当によかったと思います。苦しくてもがいているときは、なかなか気づけないものですが、日々の積み重ねが何かにつながる瞬間がめぐってくるものです。まさに私がそうだったので、今悩んでいる美容師さんに、このメッセージが届くことを祈っています。

 

※(元DADA CuBiC 代表 植村隆博氏 2013年に逝去)

 

プロフィール
DADA CuBiC
STYLIST/新田みなみ(にった みなみ)

京都府与謝郡伊根町出身。関西美容専門学校卒業後、DADA CuBiCに入社。約6年のアシスタント生活を経てスタイリストデビューを果たす。サロンワークを中心に、業界誌、ヘアカタログ、一般誌などに作品を掲載。東京ビューティコングレス2016ではジャーナル賞を受賞。「トータルコーディネート」をキーワードに、ヘア、メイク、ファッションをトータルで考えて、似合わせることを得意分野としている。

 

(取材・文/外山  武史  撮影/菊池 麻美)

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