約10年の下積み後にデビューした元理容師が今思うこと
代官山の有名店で活躍していた加藤龍矢(かとうたつや)さんと、人気スタイリストのサトーマリさんの夫婦がオーナーを務める「SiiKA」。そのメンバーの一人であるスタイリストの島田新(しまだあらた)さんは、ちょっと普通ではない経歴の持ち主です。日々喜びを噛みしめながら働いているという島田さんに、今に至るまでの紆余曲折を語っていただきました。今、伸び悩んでいる美容師さん必見のインタビューです。
「床屋ですけど、働かせてもらえますか?」
理容科を卒業後、都内の理髪店に就職し、約2年半働きました。理容師になったものの、美容の華やかな世界に憧れていたんです。とくに雑誌やヘアカタで原宿のビビッドなカラーや新しいヘアスタイルを提案しているサロンに惹かれていました。
どうしても入りたかったサロンに、「床屋ですけど、働かせてもらえますか?」とダメ元で電話したこともあります。すぐに「ダメです」と返事されたのですが諦められませんでした。そこで、オーナー指名でカットをお願いして、直談判すると、「面白いね。履歴書持ってきて」と。1週間後には採用が決まりました。
念願かなって希望したサロンに入れたのですが、理容師から美容師への転身は大変でした。サロンワークと美容師免許の勉強のため、3年間休みはなし。自分で選んだ道なのに、「床屋のままだったらこんな苦労もなかったのに…」と後悔したこともありました。理髪店ではお客さんに入らせてもらっていたので、「僕はやれる」と少し勘違いしていた部分もあったかもしれません。
カットのチェックを受けているとき、モデルさんの髪がうまく切れなくて何度もウィッグからやり直し、ウィッグ代が月8万円くらいになってしまったこともありました。結局、スタイリストデビューするまで入社から8年かかりました。専門学校卒業から数えると約10年です。美容師友達からは「普通だったら辞めるよね」とよく言われていました。
正直、辞めたいと思ったことは数えきれないほどあります(笑)。それでも「ここまできたらやるしかない、いまさら床屋に戻れないと歯を食いしばりました。気持ちがどん底のときも雑誌で活躍できるような人気スタイリストなるという目標だけは捨てなかったんですよ。
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