苦境を経験し「仕事に命をかける」ことにした。強力な武器を手に入れ、新体制で勢いが加速する ―10年サロン「STRAMA」のブランディングストーリー後編

2015年〜現在 新体制期

スタッフに本音を伝えた。店が、自分が、変わっていった

 

 

表参道に移転してからはいろいろなことがうまくいっていましたが、2015年ごろから、少しずつ変わってきました。まず「別の道に歩みたい」と言う幹部が円満退社し、それと同時期に役員にしようと思っていたスタッフが引き抜きにあったんです。しかも引き抜いたのが僕とも顔見知りの取引先だったので、すごくショックでした。自分の力量のなさや不注意、経営者としての未熟さも痛感し、なぜ流出を防げなかったのか自問自答する毎日でした。

 

 

信じていたことが裏切られ、そのショックで、2015年はすごく辛い時期でした。そんなとき『Cocoon』のVANと飲む機会がありまして。彼とは20年以上の付き合いがあるので、なんでも正直に話し合える関係。そこで今まで「店のため、スタッフのため」と思ってやってきたことがいい結果を得られなかった悔しい想いを正直に話したんです。

 

そのとき、あいつが僕に「その気持ちは俺だけじゃなくてスタッフにも伝えろ。それがお前の本音なんだから、ちゃんと伝えないとダメなんだよ」と言ってくれました。僕も苦しかったし、とにかく状況を変えていきたいと思っていたから、素直に言われたことを実行したんです。

 

スタッフと一人ひとり向き合って、店のこれからのことや自分の思いをすべて伝えました。そうしたら、スタッフたちが泣きながら話を聞いてくれて、「ついていきます! 頑張ります!」と言ってくれたんです。その言葉が僕の心を大きく変化させ、スタッフたちと一丸となった結果、売上も新記録を出すなど、店の雰囲気も変わって、調子が上向いて行きました。

 

このころから、「仕事に命をかける」という言葉が僕の中でしっくりくるようになっていました。それまではどちらかというと「うまくやる」というスタンスで、スタッフに弱みを見せるなんて考えられなかったんです。でも、命をかけるなら、弱みや本音を見せることくらい平気だと思えました。失敗して、追い込まれて、自分は変わったと思います。

 

自分もお店も変わったことで順調に仕事も増え、上向きになってきた2017年ごろ、今度は物件の問題が発生しました。物件の契約時は震災直後だったので、とてもいい条件で契約していたこともありますが、更新日が迫る中、提示された条件などが厳しかったんです。いろいろ考えた結果、そこに居続けるよりも新しいことに挑戦していこうと判断し、移転を決意しました。

 

 

後輩の美容室『CALVARi』とジョイント。新たな試みに胸が躍った

 

 

次の店舗を見つけるまでには難航しました。ある程度の規模があって、立地もいい物件がなかなか見つからず、タイムリミットがどんどん迫ってきて、焦る一方でした。

 

そのころ、『CALVARi』の高橋と飲みに行きました。彼は僕が前の美容室でリーダーをしていたときに副リーダーをしていた後輩。独立後も相談を受けることがよくありました。そのときに物件が見つからないことを相談したら、「とりあえずうちにきませんか」と提案してくれたんです。

 

雰囲気がまったく違う店だし、うまくいくのかいろいろと考えたのですが、たくさん話し合いをしていく中で彼から「自分の看板を一回置いてもいいから、豊田さんと一緒にやりたい」と言ってくれました。そうして、お互いの利害が一致した結果『CALVARi』とジョイントして新たなスタートを切ることになったんです。

 

当時、前の美容室の社長からも「一緒にやれば?」と言われていたんですよ。もちろん、社長は冗談のつもりだったと思いますけど(笑)。ジョイントした最初は同じ店舗内で別の美容室として運営することを考えていたんです。でも、いざ久しぶりに同じ空間で働くことになったときには、会社も含めすべて一緒にやろうということになりました。やるとなったら、未来を考えるとワクワクすることばかりでした。

 

現在は、代表の僕が財務を担当し、高橋は副社長として労務を担当してくれています。今まで1人でやっていたことが、役割分担ができるようになったのもうれしかったですね。強力な武器を手に入れた気分です。

 

風土の違う2つの美容室が合体したことで、最初は馴染めないスタッフがやめたり、契約上のややこしい問題が生じるなど、うまくいかない部分もありましたが、今はいい方向に向かっていると感じます。

 

『CALVARi』の代表高橋さんとタッグを組み、『STRAMA』は新たなスタートを切りました。

 

>美容師の経験を活かし、クリエイターとして次のステップを目指す

 

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