一つの夢は東京オリンピックに携わること。ハサミを置いた美容師が目指すグローバルな組織とは? ―10年サロン「SHINKA」のブランディングストーリー後編
2014年〜2016年 プレイングオーナー期
二刀流の活躍から急遽オープンした麻布十番店の秘話
2014年に、麻布十番に2店舗目をオープンしました。実は、1店舗目の六本木店をオープンする際に候補として目を付けていたにも関わらず、他業種ですが先に取られてしまった物件。スタッフの一人が、通勤でこの店の前を毎日通るのですが、物件が空きそうなのを見つけて教えてくれたんです。僕自身すごく気になっていた物件だったので、スタッフから連絡をもらってすぐに不動産屋に電話し、次の日に仮契約を早急に結びました。
当時の僕は日本ではマネジメントやフロア管理に専念し、シドニーでは技術者としてプレイヤーに専念をする二刀流のスタンスで働いていました。しかし、偶然物件を契約できたことによる予期しいていない店舗出店だったので、この麻布十番の店舗は、最初自分一人のアトリエとして使っていました。
実は、このときはまだ、日本で2店舗を経営するほどの売上は出せていなかったので、家賃を自分で支払うくらいならできるかと思い、贅沢に使っていました。ビル一棟を自分一人で運営して、シドニーに帰るときにはクローズする、という方法で回していました。ただ、売上アップと海外経験のある美容師からの求人が増え、2016年ごろからはそのやり方ではなく麻布十番店もスタッフを受け入れて営業するやり方にシフトしました。
シドニーで4店舗展開に成功。一つのエリアに固めることで、会社のイメージを確立させる
日本に注力している間も、シドニーの売上は伸び続けていました。正直、自分がいなくなれば士気も下がって売上が落ちると思っていたので、立場がないですね(笑)。
売上が上がっていったのは、長期で働きたいと希望するスタッフが増えたためです。売上がつきはじめたタイミングで、ビザが切れて辞めなくてはいけないということが減り、満期までいてくれたり、会社のサポートでビザを延長するスタッフがどんどん増えていきました。
売上が伸びたお陰で、現在シドニーでは4店舗を展開しています。4店舗とも徒歩2〜3分の圏内にあるのですが、それぞれの店舗ごとに特色が違います。特徴が違うことで「次は別のお店に行ってみたい」と思うこともあるし、徒歩圏内だと一つのお店が満席でも別の店に案内できるんです。また、あえて一箇所に固めることで、「そのエリア=SHINKA」というふうに他のサロンとの差別化を図る戦略もあります。
その他の国への海外出店について声をかけてもらうこともあるのですが、シドニーと東京以外への出店は今のところ考えていません。店舗を増やすことが成功ではないですし、自分が永住権を持っていて労働やビザの法律などもよく知っているからこそ、大切なスタッフの働く環境や将来のビジョンが整えられると思っているからです。