既存のルールをやめ、美容室をエンタメに! 業界にイノベーションを起こしたい—10年サロン「NORA」のブランディングストーリー後編
美容室がやらないことをやり続ける。けれど、お客さまの望みを第一に考える
『NORA』では常に髪を切りにきてくれるお客さまが何を望んでいるか考え続けています。例えば、何か新しいことをはじめるとき、お客さまを集めたグループインタビューを行うんです。
去年は夜に来店されるお客さまが減ってきていたので、「昔よくきていたようなキラキラOLさんに来店してもらおう!」と考えました。そこで、我々が独自にキラキラOLさんがいそうだと思った企業、サイバーエージェントさんとリクルートさんの女性各30人に話をうかがったんです。
すると、サイバーエージェントさんからは「仕事が終わって会食に行くまでの1時間で、髪とメイクを直せると便利」という声が挙がりました。従来の1時間かけるセットメニューでは間に合わないので、30分でできるコースを提案しました。一方リクルートさんは仕事が終わるのが遅いので、平日に美容室に行けないことが悩みでした。彼女たちは『NORA』が夜10時まで営業していることを知らなかったので、仕事帰りにも行けることをアピールしました。
グループインタビューを行う美容室はうちくらいだと思いますが、そうやってお客さまと言葉を交わすのは大切こと。自分たちが仕掛けようとしている仮説に対して、まずはリサーチをするんです。マネジメントに入ると髪を切ることをやめてしまう人もいますが、お客さまの声を知るためも兼ねて、僕は今も週6で現場に立っています。
スタッフとの信頼関係を深めるために。「飲みニケーション」が、逆に今の時代には合っている
僕はスタッフとは毎日のようにご飯に行ったり、飲みに行ったりするんです。そこでは仕事の話だけではなく、プライベートの話もたくさんします。そうすると、次第に仕事上の付き合いというだけの関係を超えくるんです。
僕たちの世代は先輩と飲みに行くのなんて当たり前でしたが、最近の子は逆にそうした機会が少なくなっていると感じます。「飲みニケーション」なんて言うと、同世代からは「まだそんなことやってるの?」と呆れられるのですが、今の子は一周回って新鮮に受け止めてくれる。こうした1対1の付き合いを全員とできれば、信頼関係も生まれて人がやめにくい職場になると思うんです。
そんなふうに泥臭くコミュニケーションをはかるほうが、返って今の時代には合っていると感じています。
>近い未来を考えて目の前のこと一つひとつを積み上げていく。的外れな目標になってしまわないために。