既存のルールをやめ、美容室をエンタメに! 業界にイノベーションを起こしたい—10年サロン「NORA」のブランディングストーリー後編
2017年〜現在 イノベーション期
「美容師業界にイノベーションを起こしたい」。10年前の野心を取り戻す
スタッフを退職させないために気を配っていても、それぞれの考えや事情がありやめていくスタッフはいます。2017年には、オープニングスタッフが3人立て続けに退職。
ようやくどん底から回復しかかっていたのにまた勢いが落ちてきて、自分も抜けた人のフォローに回らないといけない状況で。つい守りに入ってしまって、何にも新しいことができずにいました。
当時は『NORA』をオープンしてからちょうど10周年。僕は店を出したら時代を変えられると思っていたのに、10年経っても時代を変えるどころか自分の給料もろくに出せないような状況で、やっていることもおもしろくない。店の規模だけは大きくして、実態はスカスカ…。美容業界にイノベーションを起こしたいと思って独立したのに、自分の店を守るのに精一杯のつまらない奴になっていたんです。
そんなふうに気持ちがまいっていたころ、たまたまキングコングの西野亮廣さんのブログを読んでいました。当時は気持ちが落ち込んでいたので、ネット上で多くの人から叩かれている西野さんを見てちょっと安心していたんです(笑)。芸人だけどひな壇に出ないと言ってみたり、ルームメイトを募集したり、絵本を描いたりしているのを見て、次第におもしろいなと思い活動をチェックしていました。
あるとき、西野さんが美容室経営に興味があるとネットに書いていたんです。
そこですぐ「自分は表参道で美容室をしているんですが、よかったら一緒におもしろいことやりませんか?」とメッセージを送ると、早速返事がきてその日のうちに会うことになりました。
飲みながら、西野さんが「既存のルールで戦っちゃ駄目だ」「みんながやっていない新しいことをやらなくちゃ」と話すのにすごく勇気付けられました。それを機に、「自分もおもしろいことを徹底的にやってやろう。髪型を提案するだけじゃなくて、美容室をエンタメにしてやろう」と決心したんです。
美容室って、髪を切るために来店して、荷物を預けてシャンプーしてもらって、カットして、乾かして、収益モデルが昔から変わっていません。美容室をエンターテインメント化すれば、マネタイズの方法も変わってくるはず。こうしたことを考えて、美容室のスペースを使ったイベントや、クラウドファンディングなどにも力を入れるようになりました。
何か美容室をアップデートする方法はないかと、以前から店内にアートを飾ったり、花屋さんとコラボをしたり、企業のイベントと組んだりと、さまざまなことをやってはいました。けれど、どうも点と点がつながらないような感覚があり、おもしろいことをやっているはずなのに、なぜかうまくいかなかったんです。それが線になり、サロン運営が好調になりはじめたのは、この決意をしてからです。
>お客さまの望みを聞くために。やらないことをやっても考えるのは大切なお客さまのこと。