世界一の日系トレンドサロンを目指して。急成長を遂げる組織の次の一手 ―10年サロン「ASSORT」のブランディングストーリー後編
2017年〜現在 マネジメント見直し期
会社が成長し変化したことで、スタッフの離職が相次ぐ
2017年は、これまでで一番大変だった年かもしれません。この年は、オランダに『ASSORT AMSTERDAM』の出店がありました。日本、ニューヨーク、香港に続く4ヵ国目で、初のヨーロッパ。さすがに海外出店にだいぶ慣れてきていて自信もあったんです。
しかし、オープンから1年後、現地でビジネスをやりたいという人が、オランダのスタッフをほぼ全員引き抜いてしまったんです。店に残ったのは一人。もう営業は無理かもと思いましたが、幸い求人が重なり、なんとか営業することができました。
この時期にはオランダに限らず、離職が相次ぎました。それまでの離職率はほぼゼロだったのに、各店舗で1〜2人辞めることになったんです。離職の理由は引き抜きだったり、人間関係だったりさまざまですが、当時の僕は現場をほとんど離れていたので、「コミュニケーションをもっとしっかり取っていたら違ったのかもしれない」と考えさせられました。
また、立ち上げメンバーが退職したのも大きかったです。『ASSORT TOKYO』をはじめた2011年は「ただかっこいいものを作ろう」と言っていたのが、今では海外展開も増え、インターナショナルであることに力を入れている。長い時間の中で変化したブランディングを前に、「自分がここにいる意味ってなんだろう」とスタッフ自身も改めて考えたのだと思います。それは仕方ないことですが、やっぱり寂しいことでもありました。離職が相次いだことは、今までのやり方を変えないといけないと認識する大きなターニングポイントになりました。
マネジメント体制を構築。採用では会社のミッションを共有できる人を
経営者としてやり方を見直してからは、福利厚生を中心に社員の働き方や、社内のマネジメント体制を整えました。2018年4月には、スタッフを全員正社員化。社会制度や有休制度を充実させるためには国内の収益が必要なので、フランチャイズにも挑戦しています。
マネジメント層にコーチングスキルを学んでもらったり、グーグルやメルカリといった企業も取り入れている「OKR」という目標設定・管理制度を設けたり。教育にも力を入れています。
世界的に見ても、自分の会社のミッションを知らずに働いている人がほとんどだそうですが、うちでは経営理念などをきちんと共有しています。スタッフを採用するときも、第一に大切にしていることは会社のミッションを共有できるかどうか。スタッフには「ASSORTは何を達成したいのか」、「自分はなぜここにいるのか」を、しっかり考えてほしいんです。
そして会社の理念がきちんと共有できる仕組みを作るためには、マネジメント層が要を握ります。うちのマネジメント層の特徴は、我が強くなくて、相手の話を聞ける人であること。一個一個をきちんと丁寧に仕事をこなせたり、ポジティブな性格であったり、時間を守れたりする、一般的な社会性がある人を置いています。
>経営者として冷静な視点が身につく。小林さんが店舗展開で重視することとは