日本でお店を作る気はなかったのに。店舗展開を続けてきた経営の裏側 ―10年サロン「ASSORT」のブランディングストーリー前編
カット料金2万円への挑戦。値上げにより忘れていた美容師としての気持ちを取り戻す
2016年には全店でカット料金を値上げしました。ニューヨークではベテランの美容師のカット料金が上がるのは普通のことなのですが、日本は逆に価格競争ばかりしている。でも、年齢とともに体力が衰えてきて、それでも稼ぐためには単価を上げるしかありません。
以前からスタッフに値上げをするよう勧めていたのですが、なかなか踏み切る人がいなかったので、僕自身のカット料金を2万円に値上げしました。突き抜けた価格設定にしたことで話題になり、同じように値上げする人も増えてきたので、やってよかったと思っています。
また値上げをしたことで、美容師の仕事と改めて向き合う機会にもなりました。一日に30人近く切っていて、お客さまとゆっくり話せない時期も長かったですが、価格を上げてからはゆっくり話す時間を設けられるようになったんです。数年ぶりに新規のお客さまも取り、そのときは美容師としての気持ちを取り戻せました。
今は美容室に立つのは月に3〜4回なのですが、いずれはハサミを置いて、経営に専念する時期がくると思っています。その準備段階としても、値上げはいい判断でした。
>後編へ続く※2019年4月19日公開予定
- プロフィール
-
ASSORT
代表取締役/小林Ken
アメリカテキサス州ダラス出身。2011年青山に「ASSORT TOKYO」をオープン。その後も国内外問わず出店を続け、 2017年は初のヨーロッパ進出でオランダ・アムステルダムに「ASSORT AMSTERDAM」をオープン。現在は、国内以外に、ニューヨーク、香港、アムステルダム、シドニーに店舗を展開する。
(取材・文/小沼理 撮影/河合信幸)