【型があるから型破り】還暦間近の人気美容師、笠本善之が考える美容師人生の最終章とは?超高単価なのに1年先まで予約満了。美容業界の未来は明るい!?
先のことは考えず、目の前のことだけに集中すれば道が開く
——9割のお客さまが前職からということですから、16年来の長いお付き合いになる方もたくさんいらっしゃいますよね。
そうなんです。みなさんと一緒に年を重ねていますね。最高齢が86歳ですが、3名いらっしゃいます。4週に1度予約を入れていただいていて、「連絡もなく来なかったら死んだと思って」と言われていて(笑)。僕も「ここが予告なく閉まっていたら逝ったと思って」と伝えています。お客さまとは毎月のように顔を合わせていますから、親戚よりも会っているんじゃないかな。ライフパートナーのような存在になっていますね。
——素晴らしいご関係を築かれていますね。笠本さんは、今後のプランなどはありますか?
僕は先のことを考えないんですよ。こんなことをしたい!みたいな熱い思いも全くなくて(笑)。命ある限り美容は続けたいですが、先のことを考えると、そこに集中しちゃって耳も目もボヤけちゃうんですね。だから、目の前のことしか考えません。僕は今までそうやって生きてきたけど、ちゃんと飯を食ってこられましたし、これからもきっと大丈夫だと思っていて。
——では来年、もしかしたら海外にいる可能性もゼロではないですね!
そうですね(笑)。新しい景色を見つけることに興味があるので、面白そうだなと感じたら、そこに行く可能性はあります。で、味わって堪能したら「じゃ次いこう」という生き方で経験を増やしてきました。わりと感覚が鋭い方なので、危ないなと感じたら行かないですけどね(笑)。美容とは全く関係ないですが、僕は猫が大好きなんですね。”世の中は、猫かそれ以外か”というくらいに。なので、猫の保護団体を立ち上げるとか、そんな活動はラフな感じでしていくかもしれないです。仕事のビジョンではないのですが(笑)。
——笠本さん、振り幅が広いですね! そもそも美容業界に17歳で入られたそうですが、その経緯についても少し教えてください。
僕は子供の頃わりと勉強ができたので、地方の高専(高等専門学校)に通っていたんですね。専攻は化学。先輩たちの進路や就職先もすごい企業ばかりだったんですが、それって面白いの?と思ってしまって。中学の頃から音楽やファッションに目が向いていたので、あるとき勉強を一切やめたんですよ。そしたら生まれて初めてテストで最下位になって、ここは努力し続けないとダメな場所なんだと思ったので、すぐに辞めて美容室で働き始めました(笑)。
——すごい決断ですね。そこから42年、今は銀座の一等地で1日3〜4人を楽しく施術していらっしゃるわけで。
キャリアをコツコツ積み重ねてきて、本当に良かったなと思いますね。美容師の人生は先細りになると言われますけど、技術とキャリアがあれば強いですよ。近年はひとつの技術に特化した美容師さんがたくさんいますが、日本はこれからどんどん高齢化していきますし、オールラウンダーの技術力をもつ美容師がますます必要とされるはず。自分がどちらを志すのかはご自身で選べばいいことですが、僕ら世代の美容師はいちから全ての技術を積み上げているので、自信を持って前に進んでほしいですね。僕は来年還暦を迎えますが、毎日をほんと楽しんでいますよ。これから先の人生も楽しみで仕方ないです。
- プロフィール
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笠本善之(かさもとよしゆき)/『private.』フリーランス美容師
1965年生まれ、山口県出身。17歳で美容業界に入り、数店舗を経て25歳で出店。5年後に諸事情で閉店し、福岡に活躍拠点を移す。そこでTAYAグループに入社し、撮影や教育面でも活躍。39歳のときに銀座の新店舗に異動となり、上京。以降、その店舗で16年間トップデザイナーとして活躍したのち退社。2022年9月、銀座(場所非公開)に自身のアトリエサロン『private.』を立ち上げる。
インスタグラム:@kasamotoyoshiyuki
(文/織田みゆき photo/宮崎洋)