【型があるから型破り】還暦間近の人気美容師、笠本善之が考える美容師人生の最終章とは?超高単価なのに1年先まで予約満了。美容業界の未来は明るい!?
カット料金1万円をいただく自分になるため、努力したこと
——客単価を上げるために苦労されている美容師さんは多いと思いますが、笠本さんはどのようにして単価を上げていかれたのでしょうか。
僕はそれこそ福岡で、1500円カットの低価格サロンも経験しましたが、高単価サロンではカットで6000円をいただいていたんですね。相場よりは高い方でした。それが銀座に出てきたら、肩書きがトップデザイナーになって1万円になったんです。驚きましたよね。上京したばかりで顧客はゼロですし、自信もなくて「無理です」と会社(TAYA)にも言いましたから(笑)。でも、今は亡き会長(故・田谷哲哉氏)が「君は誰にも越えられないキャリアがあるから大丈夫だ」と言ってくださって、もう勝負だ!と腹を括りました。
——単価が上がって、具体的にどんな努力をされたんですか?
もちろん技術はもっと磨こうと思いましたが、急にレベルが上がるわけではないので(笑)、それ以外でかさ上げできるものすべてを変える努力をしました。例えば料理でいうと、高級料理店なら器だったり、それをサーブするときの所作だったり、スタッフの言葉使いなどに違いがあると思うんですが、そんな感じで来店中にお客さまが五感で感じるすべてのものをかさ上げしようと。すぐにできることとしては、やはり身だしなみですよね。髪型、肌、爪などいろいろなお手入れはもちろんですが、香り、声のトーン、お話の仕方、会話の内容…。とにかく自分自身とサービスの質を徹底的にアップグレードしていきました。
——順調にお客さまは増えていきましたか?
フリー客を担当しながら、少しずつお客さまを増やしていきましたね。僕の中では、お客さまを見た瞬間に「この人はこのスタイル」と一瞬で決まっているんですけど、まずはお客さまのご要望をしっかり聞くんですね。その内容がおすすめしたいスタイルからかけ離れていた場合は、刀を一度納めます(笑)。でも近いようなら「こんなスタイルがお似合いだと思うのですが」と提案するんです。その後、そのスタイルを気に入っていただけたら「今回はお時間の都合でここまでですが、このスタイルはこれで終わりじゃなくて、これが始まりなんです」と伝えて、「次はこのスタイルをしましょうね」と。
——再来してくださったら、また違うスタイルをおすすめすると。
そうです。「こんなスタイルもできますよね」と期待感を持たせてあげる。こんな感じで3回分はプランニングするので、次回予約、次々回予約は僕のお客さまに根付いています。今では顧客様の半数が1年分の予約をとってくださっているので、ありがたいなと。「5年分入れておいて」と言ってくださるお客さまもいるんですが、顧客管理アプリが1年分しか入らないんですよ(笑)。