「スターにはなれない」。限界を感じるほどの葛藤を経てWilleで見つけた可能性—sai MOTAIさん

休日に一歩も動けないほど限界だった。憧れのブランドサロンで感じた葛藤

 

 

卒業後は、念願かなって憧れていたサロンに入社することができました。入社してみると、素晴らしいブランドサロンではあったのですが、光が当たっているスタッフと、当たっていないスタッフの差が大きいと感じました。そのサロンの教育は、大げさに言うと、選りすぐりの人を集めてチームにし、その中で競うことで数人の圧倒的なスターが生まれてくるような感じ。同期は、仲がよくなるというより、ライバルのような関係で仕事をしていました。

 

また、僕自身、人として未熟でした。人にきちんと伝わることを大事だと思わず、自分の思ったことをすぐにそのまま言ってしまうような性格だったんです。そんな性格もあって、アシスタントのカリキュラムは1年半くらいでクリアできたものの、反対されてなかなかデビューできませんでした。

 

デビュー後も「とにかく“売れないと!”」という気持ちだけが先行し、売上優先でお客さまを第一に考えることができていませんでした。サロンでは売上ランキングも発表されるので、売れなかったら居場所がないと思っていたんです。

 

自分自身の打ち出し方を完全に間違えてしまい、そこからどうにもこうにもうまくいきませんでした。売上を伸ばし続けないといけないプレッシャーや、好きなスタッフがどんどん辞めていってしまったこと、辞めていくスタッフを守れない自分に嫌気がさしました。実力至上主義の中で、実力がない自分が悪いのですが、高校生のころ憧れていた美容師像の足元にも及んでいない自分がいて、理想と現実がどんどん離れていくのを感じていました。最後には精神的にも限界がきたのか、休みの日に「やらなきゃ」と思うことがあってもソファから一歩も動けない状態になってしまいました。決して誰かが悪いわけではありません。でも、「美容師を辞めたほうがいいかな」というところまで追い込まれていたんです。

 

やり残したことを探すために、Willeへ。見つけたのは人をプロデュースするおもしろさ

 

 

サロンを辞めて、地元に帰って就職活動をしようかと、ぼんやりと考えていたとき、昔の同僚や先輩から連絡をもらいました。そこで「まだ美容師を辞めるのは早い!」と言ってもらったんです。そのうちの一人が、前サロンの後輩だったWilleの代表の志賀でした。

 

志賀が「一緒に働こう」と言ってくれたのは、ちょうどWilleのオープンが決まっていたタイミング。しかし、誘われた瞬間は「Willeで働こう」とは思えませんでした。精神的にも疲れ切っていたので、もう一度東京で美容師として働こうとは、まったく考えていなかったんです。

 

でも、最終的には1日悩んだ後、Willeに参加することを決めました。理由は正直、記憶が曖昧なんです。当時はまともに思考が回っていませんでしたから。なので、すごく考えて決意したわけではありません。ただ、「まだやり残したことがある。必要としてくれている人がいるならやろうかな」と思ったんだと思います。

 

Willeへの参加を決めてからは、Willeと、代表である志賀を有名にしようと思いました。しかし、オープン前にサロンに行ったときは、何を売りにしたいのかが伝わらなかったんです。オープンからスタープレイヤーが揃っているわけではなかったので「このお店はあまりうまくいかない」と直感しました。オーナーからはお店を上手に伸ばしていってくれば、あとは自由にやっていいと言われていたので、まず志賀に「何が好きなの?」と聞くと、彼は「アニメが好き」と答えたんです。その瞬間「アニメに特化したブランディングなら、確実に需要はある」と思い、ヒットを確信しました。さらに、志賀は本当にアニメが好きだったので、その思いはお客さまにも伝わると思ったんです。

 

すぐに志賀をアニメに特化した美容師として推し出すために2フロアあるうちの一つを「志賀の部屋みたいな感じにしていいよ!」と言って、余計な口は挟まず、好きなように作ってもらいました。スタッフ全員がアニメ好きなわけではなかったので、もう一つのフロアはアニメ好きではないスタッフのために、普通の空間にしました。

 

手応えを感じたのは、オープンから1年ほど経った2016年。ラブライブのキャラをモチーフにしたヘアカラー「ことりベージュ」が大きな反響を呼んだんです。ブランディングがうまくいったことで、僕は人をプロデュースする楽しさに目覚めました。

 

>僕はスターにはなれない。しかし、プロデュースする力ならある

 

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