美容師の2拠点ワーク。美の最先端・銀座から自然あふれる山形へ
人やモノ、新しい価値感がつながり循環する拠点に
—鶴岡市の「magnolia」は、完全に独立したお店なのですか?
そうです、MINXのファミリー会社ではありません。「magnolia」は美と食のライフスタイルを発信する複合施設というコンセプトでスタートし、現在は美容室とネイルサロン、そしてイタリアンレストランを営業しています。出羽三山を望める、周囲には畑しかないような場所。先ほど生き方の選択という話をしましたが、地方は東京に比べるとやはりモノも情報も選択肢が少ないんですよね。そういった土地に僕らは「Design for Life」をキーワードに、これまでこの土地になかった選択肢を提供していこう、と。マルシェやワークショップ、フェスなど、美容の枠を越えたイベントもこれまで度々開催してきました。人やモノをつなぐ場をつくっていくことで、少なからずこれからの循環型社会の役に立てるのではと思っています。
—提案するヘアデザインは、東京でのサロンワークとは変えていますか?
デザインのあり方、示し方は変えていません。ベースにあるのは、土地が変わってもいいものはいいんじゃないかという考え方。オープン当初はテレビCMや広告もうちましたが、それらもあえて尖ったセンスのものにしていました。スタッフには格好よすぎて敷居が高すぎると言われましたが、僕は土地に寄り添いすぎるのではなく、自分のやり方でこのサロンを実現したかったんですよね。それに、すでにある美容室をつくっても、選択肢の幅を広げることにはならないじゃないですか。この土地にいながらにして、中央の情報やセンスが手に入るということが重要だと考えました。
—いま、お客さまの層はどのような感じですか?
今は若い方から年配の方まで、地元の方を中心に幅広い層のお客さまにきていただいています。そんな風に尖っているものだから、はじめは恐る恐る様子見という感じでいらっしゃった方も、きてくださったら「意外にアットホームじゃない」と感じてくださるようで、どんどんお客さまの裾野が広がっていきました。
—レストランも同じ敷地内にあるということですが、そのねらいは?
レストランでは同じ鶴岡市内の畑でとれた野菜を中心に、地元庄内の食材を活かしたシチリア料理を提供しています。鶴岡市は日本で唯一、ユネスコに食の文化都市に認定されているんです。そのような地域の食材を地域の人に喜んでもらって、この土地に良い循環を生む役割を担うのも、僕がめざしていることのひとつです。