ABBEY松永さんのアシスタント・木下新は1年間の負のループから抜け出せた努力の人−トップランナーの「神の右腕」Vol.3−
これまでスランプゼロ。順風満帆かと思いきや…。
―入社したときの目標って覚えていますか?
入社のときは、誰よりも早くデビューする! と決意していました。
早くデビューすることがかっこいい、と思っていたんです。ABBEYの最速デビューが2年半なので、僕も必ず!と意気込んでいたので、朝6時から24時まで練習をしていました。
一番頑張っていた自負はあるのですが、最速デビューに気持ちがとらわれすぎて焦ってましたね。
ABBEYの教育は、課題が出され、テストをして次のステップに進むシステム。1つの課題につき約2ヶ月ちゃんと練習をすればほとんどが合格できます。
最初は順調に課題をクリアしていくんですが、ある課題からさっぱり合格ができなくなって…1年くらい同じ課題をずーっとやっていました。何をやっても受からないし、どうしていいか分からない。
―その状態は結構しんどかったのでは?
学校も割と真面目に通っていたし、これまで大きなつまづきのない人生だったので、はじめてのスランプと言ってもいいかもしれません。
アシスタントとして先輩スタイリストについていてもなんかハマらなくて、ミスしたり、いつもの仕事なのにすごく緊張してしまったり。半年間ほど負のループにハマってしまいました。
―なぜスランプに陥ってしまったか、今だから分かる理由ってありますか?
まずは、誰にも頼らなかったことです。
それこそ一週間に一度、松永がカットを見てくれているから、教えてもらえばすぐ解決できたはずなのに、謎のプライドが邪魔して誰にも相談しなかったんです。
もうひとつは最速デビューが美容師としてのゴールになってしまっていたんです。
自分がどんなスタイリストになりたいのかが、抜け落ちちゃっていたのを、代表たちは見透かしていたんだと思います。
―今はスランプを抜け出せたんですよね? どうやって抜け出せたんですか?
先輩が怒ってくれたことですね。
人に注意するのって正直すごく面倒くさいことですよね。でもいつでも自分を気にかけて注意してくれて、自分のことを面倒がらない先輩の存在ってありがたいのでは? と気がついて。段々と、自分の中に固執していた変なプライドが抜けていきました。やっと仕事が楽しいかもと思えたんです。
そんなとき、全然合格できなかった課題が合格できたんです。
―何か殻が破れたんですね。
自分が一番練習したという自信はあるし、そこは自分のプライドとして持っておきたいんですが、プライドだけではなく、人からのアドバイスを受け入れる大切さを知れた1年でした。