「ヒデキさん、最近、ダサくないですか? 」フラットな関係だからこそ、心揺さぶるコトダマBroccoli playhair 藤川 英樹さん
美容師は髪を切るだけじゃなくて、時間をプロデュースする仕事だ
またあるとき、同じ先輩から「美容師の仕事って何をする仕事だと思ってる?」と聞かれたことがあります。僕は「髪を切ってキレイにする仕事」くらいにしか答えられなかった。それに対して先輩は「お客さんからしたら、休みの日の大切な2時間を使っている。その2時間、縛られていることは人によってはすごくストレス。しかも、美容師に予定を合わせることだってある。その預かった時間はすごく大事なんだよ」と教えてくれたんです。預かった時間を本当に大切にプロデュースしようと本気で考えるきっかけになりました。
お客さんだけではなく、スタッフに対しても同じように考えています。スタッフとご飯に行くときも、みんなの時間を預かっていると僕は考えているので、できる限りいい時間をプロデュースしたい。以前はミーティング後に飲みに行くのが定例でしたが、小さい子どもを育てているスタッフもいるので早めに切り上げて、家族との時間を大切にしてもらうようにしています。
自分たちを選んでくれた人を大切にしないでどうする?
僕の両親も美容室を経営しているので、子どものころからサロンの様子を見ていました。確かあれは僕が中学生くらいのころだったと思います。いつも泣いてばかりで、あんまり優秀でなさそうなスタッフさんがいたんですよね。で、僕はそのことを父親に言ってしまったんです。「あの子はなんで一緒に働いているん?」みたいな感じで。そのときはもう、めちゃくちゃに怒られまして。
「お前は人をなんやと思っているんや! 世の中に美容室が腐るほどある中で、自分の美容室を選んでくれたんやから、その子を大切にできんでどないんすんねん!」
自分たちの美容室をみつけて面接を受けにきてくれたことって、めちゃくちゃかけがえのないことだと思います。間違っても、一緒に働いてくれている人を上から見たりしてはいけない。父親の言葉は、今も胸に刻まれています。
母親の言葉も心に残っています。僕が独立してすぐの話なんですが、スタッフのことで少し悩んでいて、母親に相談したことがあったんです。どんな内容の相談だったかは忘れてしまったんですが、母親に「アンタ、ダサいなー。スタッフに何を求めているの。スタッフは無償の愛で育てなあかんねんで」と叱られたんですよ。
両親の経営するサロンでどんな経験があって、その考え方にたどり着いたのかわからないですけれど、ホンマにその通りだと思って反省しました。僕が独立してからは、経営のことは父に、美容師としてのことは母に相談しながらやってきた部分もありますね。
>上も下もないフラットな関係だからこそ、心揺さぶるコトダマが生まれる