ヴィダルサスーンとは真逆の技術にあえてトライ「TONI&GUY LONDON」でよりクリエイティブな道へ 第二部

TONI&GUYアカデミー生に選ばれて

 

TONI&GUYアカデミー

 

TONI&GUYの本社から認められるレベルの高いスタッフを育てるためには、アカデミーに入って学ぶ必要があります。最高の技術を身につけるためのしっかりとした前提技術や厳しいレッスンをやり抜く気概が必要なため、私の勤めていたサロンでは、5年近く、アカデミーにスタッフを送り込んでいませんでした。

 

でも私が入社してから、久々にアカデミーにスタッフを送り出そう、ということになり、オーナーは、私たちスタッフに5つのカット手法を習得させ、競い合わせることに決めました。

 

日本の美容室では、先輩から技術を学びますが、イギリスではあたりまえに先輩から技術を教えてはもらえません。通常は先輩から本を渡されて「これを見てやってみて」と言われるだけです。仕方なく一人で朝練をしながら、大会で結果を残すなど実力を認めてもらえるようアピールをしました。そして先輩に懲りずに「教えてほしい」と伝え続けていると、いつしか技術を教えてくれるようになりました。熱意を認めてくれたのだと思いますが、それは、本当にうれしかったですね。

 

そうしてスタッフ同士で技術を競い合った結果、アカデミー生として選んでいただき、オーナーから、「普通に勉強して帰ってきてはダメ。特待生になって帰ってきなさい」と送り出してもらいました。大きな経費がかかる貴重な体験を、新参者の私にさせてくれるというのです。期待を裏切らないよう、がんばらなければと思いました。

 

寝ないでがんばった6週間

 

アカデミーは6週間という期間でしたが、本当に厳しかったですね。授業中、泣きながら教室の外に出ていってしまう生徒もいました。ヴィダルサスーン・アカデミーは、生徒として受講をしていましたが、今回は、会社から推薦された社員としてアカデミーに入ることになります。技術やお客さまへの接し方だけではなく、プロダクトセールの方法、会社の歴史などを、厳しく叩き込まれました。寝ないで調べ物や、暗記をすることもありました。

 

アカデミーの試験にパスすれば、サロンに戻って活躍の場を広げることができ、さらにパスした人の中から、特待生も選ばれます。特待生は、ロンドンファッションウィークのバックスタージのオーディションを受ける権利を得ることができ、世界を飛び回って教育活動を行うアートチームにも参加できます。

 

アカデミー卒業直前におとずれた危機

 

 

トレーニングでは、実際にお客さまの髪もカットしますが、その際、トリートメントなどの商材も売らなければなりません。私は、これまでにない数を売り上げ、高い評価を得ることができました。

 

アカデミー期間の最終日は、プレゼンテーションとモデルカットの試験がありました。その日はプレゼンテーションのあと、4人のモデルをカットする予定でしたが、全体のプレゼン準備が悪く、先生を怒らせ、「今日の終わり時間は5時だったけれど、3時までにする」と言われてしまいました。

 

生徒たちはみんな泣き崩れてました。6週間がんばって積み上げてきて、あとは5時の締め切り時間ギリギリまでがんばれば、試験をパスできると思っていたのに、2時間も時間を減らされたら、予定していた作業を終えることができません。私も、「もう特待生にはなれないし、ここまで一緒に頑張ってきた仲間もひょうかしてもらえないのか」と呆然としていました。

 

試験時間が短縮され、用意していたモデルもキャンセルしなければならず、新たにドライチェックのためのモデルを探さなければなりませんでした。「時間もないし、もうダメだ」と泣いていましたが、クラスのリーダーに「泣いているのはもったいない。特待生になれる可能性があるのは君だけだよ。諦めるの? 日本から飛び出して、どんな想いでここまできたんだ!」と言われ、ハッとしました。

 

それで教室を飛び出し、街でモデルを捕まえて、「髪の毛だけ洗わせて」とお願いし、会場に連れていき、試験に合格することができました。

 

周囲の協力を得て、特待生になる目標を達成!

 

そのあとは、クラッシックグラジュエーションという、ボブカットの試験でしたが、そのモデルもキャンセルになっていたので途方に暮れていると、別の生徒が、「私はクラッシックグラジュエーション用のモデルを準備できたけれど、試験を受けられる見込みがない。モデルをあなたに譲るわ」と言ってくれたのです。ライバルにモデルを譲るなんて、普通ないことです。仲間に感謝しながら、その想いを乗せてモデルさんを切らせてもらいました。

 

そうして試験終了時刻の3時になって、合格したのが5人。私もどうにかその中に入れてホッとしていると、「今回一人、特待生が出ました」と、私の名前が呼ばれました。そのときは、本当にうれしかったですね。その6週間をともに過ごした仲間には今も世界でそれぞれ活躍しており、お互いに切磋琢磨できる関係が続いています。

 

>パーソナリティの向上という新しい課題

 

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