「ショート×パーマの救世主」Qilt+LIM仙頭郁弥の逆転劇。マイノリティが本命になる日。 【関西人気美容師を繋ぐ輪】
美容業界は個で生き抜く時代へ。だから、技術が欠かせない。
デビュー後もそう簡単に軌道に乗った訳ではなく、1年半は鳴かず飛ばずの状態が続きました。予約も埋まらず、40~50万円が限界で……。その頃はそもそも美容師としてのスタンスが間違っていたんです。自分で言うのもおこがましいですが、色んな人から可愛がってもらえる“愛されキャラ”だったんですよ。でも、そのキャラを売りにして「お客さまを楽しませれば良い。楽しませればファンになってくれる」と勘違いしちゃったんですね。もちろん愛されキャラだけでは技術をカバーできる訳もなく、お客さまとの信頼関係を築ける訳もありません。「一人のプロフェッショナルとして技術を極めなければ、お客様は納得してくれない」とくずぶっていた時にようやく気付いたんです。
接客力や傾聴力、SNSの時代になると発信力。美容師に求められる技術は年々広がっていますよね? でも、技術力はいつの時代も欠かせない絶対的な要素なんですよね。 カリスマ美容師の時代から成長を遂げてきた美容業界ですが、今はある程度成熟しきった状態。1周巡ってまた “技術”が注目されるんじゃないかと予想しています。これからは個の技術で生き抜く美容業界に突入するということですね。
そんな美容業界だからこそ、そもそものサロン選びから見直さないとね。安定を求めて、会社の規模・居心地・待遇ばかりを気にしている人も多いのではないでしょうか? でも、どんな職業に就こうが今は会社が守ってくれる時代ではないので、個人的には技術を重視したサロン選びをお勧めします。 「あの人から技術を学びたい」って感じですね。
マジョリティではなく、マイノリティに響く差別化を。
美容業界は特に先輩から技術を伝授してもらったり、他のサロンの人気美容師さんが作るスタイルを参考にしてみたり、「真似をする」という傾向が強いですよね? もちろん駆け出しの時や新しいジャンルに挑戦するときは、どんどん真似をして構いません。
でも、これからは個の時代。最終的には自分で新しいデザインを考えて、差別化を図っていかないと生き残れないでしょう。
でも、「お客さまを集める」こと自体は難しい話ではありません。アイドルグループの『ももいろクローバーZ』なんて、たった4人で7万人のファンをコンサートで集めるみたいですからね。一方で 美容業界では1カ月でたった200人を呼べれば「売れっ子」。何万人を集めなければ人気者になれないアイドルの世界と比べれば、美容師業界なんて楽なもんですよ(笑)。
たった200人をファンにすれば良い話だから、差別化する武器も大多数を狙わずに、コアな客層に響くものでいいんです。美容業界も成熟してきている今、お客さまの要望も多様化しているので、何かに特化するだけでもチャンスは見えてきますよ。
僕自身も今はショートととことん向き合って、どこにこだわりを表現できるかを模索している段階。仙頭流ショートスタイルが確立され、いつかそれが業界のトレンドになればうれしいですね。
新ブランドを立ち上げ、LIM初の京都進出へ
今では 業界雑誌に掲載されたり、 オンラインセミナーの講師として一気に依頼が来たりなどサロンワーク以外の活動も増え、どんどん新しいフィールドが広がっています。そして、いよいよ 今年の秋ごろには先輩とともに、LIMグループから新しいブランドを京都で立ち上げる予定です。LIM初の京都進出なのでプレッシャーはもちろんありますが、これまでの経験を存分に生かしたいですね。今後は経営者としての資質も問われることになりますが、もちろん技術者でもあり続けるつもりです。ハサミを置くことなく、ひたむきに髪と向き合う職人としてカッコよくあり続けたいですからね。
次回は神戸の人気サロン『Dreap』のkaoriさんにお話を伺います。お楽しみに!
- プロフィール
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Qilt+LIM
トップスタイリスト
仙頭郁弥(せんとうふみや)
高知県出身。国際デザイン・ビューティカレッジ卒。「Qilt+LIM」のトップスタイリストとして、柔らかなショートのパーマで人気を集める。サロン外ではショート・パーマのセミナー講師として活動の幅を広げる。2021年秋ごろには新ブランドを立ち上げ、LIM初の京都進出をリードしていく。
(文/村井貴臣 撮影/山元裕人)
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