異色キャリア美容師4名に聞く、仕事を辞めて美容の道に進んだ理由

安定した職業「公務員」の葛藤。 やりがいと成果を求めて異業種にチャレンジ! ―NEXT古田一馬さん

 

 

――市役所の公務員になった経緯を教えてください。

 

高校は進学校だったんですが、自分は数学や英語があまり好きじゃなくて(笑)。進学に必要な必須科目の単位が足りず、行きたかった大学を受けられませんでした。また、勉強自体がそれほど好きではなかったので、その大学以外での進学は考えていなかったんです。

 

先生と母には、「安定した職業に就きなさい」と言われました。高卒で入れる仕事で、思いつく限り一番いい職業が公務員だったので「じゃあ市役所を受けてみようかな」と思ったんです。当時は就職氷河期と言われている時代だったので、公務員試験に受かったときは、親や親戚も「すごいすごい」って言ってくれて、働くことに不安はありませんでした。

 

市役所の「水道公務課」に勤められていたころの古田さん

 

――市役所の公務員を辞めたのはなぜですか?

 

公務員は8時〜17時で8時間働くのですが、その時間が自分にとってはすごいつまらないと感じていたんです。言い方は悪いのですが、忙しい日と忙しくない日があり、忙しくない日は本当に暇でした。毎日Yahoo!ニュースを見たり、仕事をしているふりをしたりしていて、やらなくても、やっていてもお給料は変わらなくて…。それが自分には合っていないのかなと思っていました。

 

また、同じ学年の子たちが、大学の合宿とかサークルですごく楽しそうで、その様子をInstagramなどで見てしまうと、自分は充実してないなあと思って、つらかったです。そんなとき、ナオトインティライミの「メッセージ」という曲の2番の歌詞「今の自分のままじゃダメだ」というのを聴いたんです。その瞬間に、辞めようと思い、入社した年の7月に退社の意思を伝えました。お袋は号泣し、親父からも猛反対されましたね。

 

――なぜ「美容師」を選んだのですか?

 

最初は保育士になろうと思っていたのですが、調べるうちに男の人の保育士はあまり稼げないという話を聞き、不動産業者になろうと思いました。それで、宅建を受けてみたのですが、受からなくて…。歩合制の職業の中で僕が受験できる仕事が美容師だったこと、華やかな仕事に憧れたこともあり、美容師になろうと思いました。

 

ただ、美容師になろうと決めたのが、入学式のはじまる1〜2週間前ぐらいだったので、本当にギリギリでした。美容学校受けたのが3月半ばぐらいだったので、入学後は教科書もまったくなかったです(笑)。

 

――別のキャリアを歩んできたことで苦労したことはありますか?

 

専門学校のころ、美容師になってからの接客を学ぶためにアパレルでバイトしていたのですが、初めて会う方の心を掴むのが最初はすごく大変でした。市役所は必ず用がある方がいらっしゃいますし、マニュアルもしっかりあります。しかし、アパレルの接客はスピーディーに裁く方もいれば、最初から最後までお客さまに付き添って売るスタッフもいてさまざま。もともと人見知りだったこともあり、初めての人がきたときに話したり、話題を作ったりするのが大変でした。

 

――前職での経験は、どのような部分で仕事にいきていると感じますか?

 

公務員のころ電話や窓口の対応もしていたので、言葉遣いや目上の方とのコミュニケーションが失礼なくできていると思います。バイトや学校の先生や先輩から嫌われるようなこともあまりなく、先輩からはかわいがってもらっていました。

 

また、公務員だったことは、面接でアピールポイントにもなりました。固いイメージの仕事ですから、真面目だと思ってもらえるようですし、興味を示してくれるポイントになっていたと思います。さらに、独立する前に勤めていたサロンでは、ホットペッパーやお店のサイトを作るときの文章を任せてもらえました。きちんとした文章能力があると思ってくれたみたいです。

 

――別のキャリアを歩んできたからこそ感じる「美容師」の魅力とは?

 

人を笑顔にでき、笑顔にするために努力したぶんの信頼やお給料が自分に返ってくるところ。言い方が悪くなってしまうのですが、やった分だけ、お金をもらえますし、お客さまが喜んでくれて、もう一回きてくれたときは、選ばれているなっていう実感があるので、やりがいをすごく感じます。

 

今はメンズ専門でやっているのですが、メンズの方は毎月きてくれるので、毎月会っていると、友だちみたいな感じになるんです。だから、友だちが月に一回、現状報告しにきてくれるような感覚なんですよね。美容師はお客さまも自分も幸せになれる素敵な職業だと思います。

 

プロフィール
NEXT
オーナー/古田一馬(ふるた かずま)

群馬県出身。高校卒業後、市役所の公務員として働く。19歳のときにさらなるやりがいを求めて、美容師を目指す。専門学校卒業後は、OCEAN TOKYOに就職。アシスタントとして2年経験を積んだのち、転職したサロンで副店長に従事。26歳で独立し、ワンフロアに複数のサロンが入る美容室モール「THE SALONS」で、メンズ限定サロン「NEXT」をオープン。

 

(取材・文/QJナビDAILY編集部)

 

  ライフマガジンの記事をもっと見る >>

Related Contents 関連コンテンツ

Guidance 転職ガイド

Ranking ランキング