訪問美容の世界をリアルインタビュー! 現役美容師に聞いた業界事情とは
お客さまの笑顔がやりがい! おしゃれを楽しんでもらうために真心のある施術を-訪問理美容きずな 中川佳世さん
訪問理美容きずな
代表/中川佳世(なかがわ かよ)
1984年生まれ鹿児島県出身。鹿児島県理容美容専門学校卒業後、大阪の美容室に就職。7年間サロンでの経験を積み、訪問理美容サロンに転職。介護も半年間学び、介護職員基礎研修過程を修了。2015年帰郷し、「訪問理美容きずな」を設立。訪問理美容を通してたくさんの人を笑顔にすることが夢。
訪問美容師になろうと思ったきっかけを教えてください。
「訪問理美容を自分で始めよう」と決めたのは、母が61歳で若年性アルツハイマー型認知症になったことがきっかけでした。母は私を娘だと認識できてはいませんでしたが、私が髪をカットしてあげると昔よく見た母の笑顔に会えたのです。その笑顔を見て、女性はいくつになってもきれいでいたいと願い、そのことが生きる自信にもつながっているのだと実感しました。そこから、さまざまな理由で美容室に行けない人を母のように笑顔にしたいと思い、訪問理美容を始めたんです。
訪問美容師になるためにどのような勉強をされたのかを教えてください。
元々大阪のサロンに勤めていたのですが、訪問理美容サロンに転職してノウハウを学びました。その後、お客さまに心から安心してサービスを受けてもらいたいと思い、介護職員基礎研修過程(旧ヘルパー1級)を履修しスキルを磨きました。今は、お客さまの身体で気をつけることがないかを担当の介護職員さまにお聞きしたり、コミュニケーションが上手な介護職員さまを見つけたら、コミュニケーションのコツを教えていただいたりするなど、日々の現場から学ぶことが多いです。実際に役に立ったコツは、お客さまには鏡越しではなく、サイドから目線を合わせてお声かけするというもの。鏡越しだとまったく反応をされないお客さまでも、この方法だと意識を向けていただけて、スムーズにお話ができます。また認知症のお客さまの中には、自分の意思を伝えることが難しい方もいらっしゃいます。そんな方には「こちらとこちら、どちらがよろしいですか?」というように、二者択一で質問をすると、お答えしやすいと教えていただきました。
一般的なサロンワークと異なる点はなんですか?
長時間の施術はお身体の負担になるので、短時間での丁寧な施術とお身体への配慮は常に求められますね。また、私たちは真心や傾聴を特に大切にしています。特に認知症の高齢者さまにはこちらの気持ちが敏感に伝わるんです。気持ちをご自分の言葉で伝えるのが難しい方もいらっしゃるので、あたたかい気持ちと笑顔で接することが、安心していただくことに繋がります。
訪問美容師をしている中で印象に残っているエピソードを教えてください。
ある有料老人ホームにいらっしゃった、若いころからおしゃれが大好きな80代のお客さまのお話です。その方はいつもカットのみのご予約だったのですが、ある日の施術中「なかなか言えなかったけど、本当はもっとおしゃれを楽しみたいの…」と話してくださいました。それからパーマやフェイシャルメニューもさせていただき、どんどんきれいになられ、明るい表情も見せてくださるようになったんです。「次はきれいなパープルに髪を染めてみたいの。人生一度きりなんだから、やりたいことをやりたいわ」と、イキイキとお話してくださる姿に私もパワーをもらいました。いくつになっても「おしゃれを楽しむ」ことは、自分らしく過ごすことに繋がるとても素敵なことだと実感しますね。
仕事のやりがいは何ですか?
「おしゃれはもういい」とおっしゃる方でも、施術後きれいになるとパッと表情が明るくなるんです。「こんなにきれいになったから、外出したくなったわ」「もう一度、お見合いでもしようかしら♪」と言ってくださるお客さまの笑顔は、いつも涙がでるほどうれしくてたまりません。私にとっての一番のやりがいは、お客さまのキラキラした笑顔です。
訪問美容師に興味がある美容師さんにアドバイスをお願いします!
訪問理美容のお仕事は、施設の稼働時間に合わせてほぼ9時〜16時で、土日が休みのところが多いと思います。そのため、家族との時間を大切にしながら、やりがいをもって仕事ができるので子育て中の方にもおすすめです。私自身、シングルマザーで3人の子育て中ですが、子どもとの時間も大切にしながら働くことができています。訪問理美容はお客さまのお身体への配慮など気をつけることも多く、大変なことも多いですが、それ以上に感動や喜びもあるお仕事です。また、これから超高齢者化社会に向けて、ますます需要も高まるお仕事だと思いますよ。
<まとめ>
みなさんそれぞれ経緯は違いますが、事情があって美容室に行けない方を笑顔にしたいという思いから訪問美容の道を進まれたよう。「お客さまが明るくなれる」「笑顔になってくれる」ことがやりがいだと語られているのが印象的でした。訪問美容へ進みたいけど何から始めたらいいのかわからないという方も、今回初めて知ったという方も、ぜひ参考にしてくださいね。
(取材・文/QJナビDAILY編集部)