訪問美容の世界をリアルインタビュー! 現役美容師に聞いた業界事情とは
誰かの人生の一コマに関われる仕事! 丁寧なカウンセリングでたくさんのお客さまを笑顔に-佐々木祐太さん
佐々木祐太(ささき ゆうた)
1984年生まれ北海道出身。2004年北海道理容美容学校卒業。都内サロンに8年勤務後、訪問美容会社入社。サロンワークと訪問美容を両立している。また株式会社訪問美容サービスの役員として多くの人に訪問美容を広めるために、セミナーやアドバイザー活動もしている。
訪問美容師になろうと思ったきっかけを教えてください。
22歳のころ、大きな事故で右手を複雑骨折し入院しました。リハビリを続けてはいましたが、その間、利き手ではない左手での生活にとても苦労し、気持ちも落ち込んでいたんです。そのとき、入院していた一人のご婦人が「あなた美容師さん? 私の髪の毛乾かしてくれない?」と声をかけてくだり、毎日、左手で頑張ってブローをしました。決して上手いとは言えない仕上がりでしたが、ご婦人はとても喜んでくれたんです。そのときに感じたのは、どんな所でも美容師はできるということ、美容室に行きたくても行けない人がたくさんいること、そして一人の人を全力できれいにするとこんなにも笑顔になってくれるんだということ。それに気づいたことが訪問美容に進むきっかけでした。
訪問美容師になるためにどのような勉強をされたのかを教えてください。
訪問美容の会社に入社しそこで基本のノウハウを習いました。また認知症の勉強をするために、介護職員初任者研修や認知症サポーターの資格も取りました。ただ、訪問の現場は常に状況が変わるので現場が一番の勉強になりますね。「認知症の理解」はとても苦労した部分なのですが、認知症のある方の対応やカットの仕方、会話の仕方は実地経験で学びました。障がいのある方への対応や寝たきりの方へのカットなど、現場で体験し練習して繰り返したことで今の自分があると思います。
一般的なサロンワークと異なる点はなんですか?
サロンワークとの大きな違いは、カウンセリングにあると思います。ご高齢で施設に入居されているのは元気な方だけではありません。そのため、その方の状況に合わせて、髪型を決める際の判断基準をどこにするかが重要です。どのくらいのペースでカットをしているのか、普段は寝ていることが多いのかなど、介護者さんからのヒアリングも重要な判断材料になります。例えば認知症を患っている場合、認知症の度合いによっても変化しますが、ご本人、ご家族、介護者、それぞれのご要望をどのくらいの割合で汲み取るかを状況に応じて判断しなければなりません。
訪問美容師をしている中で印象に残っているエピソードを教えてください。
「ターミナル(終末期)」といういわゆる余命が数カ月と判断された方のお話です。自分の担当していたお客さまがターミナルになったとき、僕も悲しくて苦しかったのですが、そんな顔は見せずに普段通りにカットしました。そしてその方が天国へ行き少し経ってから、使用されていたお部屋から僕宛の手紙が出てきたんです。そこには「先生いつもきれいにしてくれてありがとう。あなたのおかげで最期まで楽しい人生が送れます。本当にありがとう」。そんなことが書かれていました。このとき、誰かの人生の1コマに自分が関わることができた、本当にこの仕事をやってきてよかったと思いました。
仕事のやりがいは何ですか?
訪問美容を始めたてのころは、お客さまが喜んでくれることが大きなやりがいでした。しかし訪問美容歴が10年を過ぎたころから少しずつ、これから先の超高齢化社会にむけて訪問美容師を増やすこと、興味を持ってもらうこと。そして訪問美容が楽しいと思ってもらえることにもやりがいを感じるようになりました。もっとたくさんの美容師さんが訪問美容の仕事も自分の選択肢の一つにしてくれるよう、セミナーなどで広めていきたいと思います。
訪問美容師に興味がある美容師さんにアドバイスをお願いします!
興味を持ったときから訪問美容師はスタートしています。今なんとなく仕事をこなしている若手の美容師さん、子育てで休職して復帰のタイミングを逃してしまったママ美容師さん、新しい価値とキャッシュフローを一つ増やしたい経営者さん、訪問美容で新しい自分が見つかるかもしれません。訪問美容は、今までとは違う価値観を創造することができますし、待つだけの美容師ではなく必要とされる仕事です。市場の価値がこれから高くなる業界なので、ぜひ一緒に訪問美容業界を盛り上げていきましょう!
>大阪のサロンで経験を積み、故郷で訪問美容専門サロンを立ち上げた訪問理美容きずな 中川佳世さんが語る、訪問美容のやりがいとは?