【HEAVENSディレクター・世良田奏大】新卒入社で18年。老舗人気サロンの技術集団を率いるマインドセットとスタッフ教育への想い
「義理人情を大事に生きる方が、楽しい」
――サロンを辞めようと思ったことは?
それは過去には何度かありますけど、辞める理由って「やりたいことがここでは叶わない」場合だと思うんですね。でも、うちの社長は毎回僕がやりたいことをやれるように動いてくれたので、やめる理由がなかったです。例えば「自由に働きたい」とか、「もっとお金が欲しい」というのも辞める理由になると思いますけど、自分はそういう願望がなかったので。”義理人情”を大切に生きてたほうが、楽しいかなと思っています。
もともと僕は噛み付くタイプなので、社長とは今でもときどき喧嘩しますよ(笑)。ですが、アシスタントの頃から会社のことは誰よりも考えていたと自負しています。文句を言うからには自分もしっかり成果を出さなきゃと思っていたので、売上の数字が上がってきたタイミングで店長やディレクターのポジションを自ら取りに行きました。立ち位置を上げれば会社に堂々と意見できると思ったので、そのために積極的に行動しましたね。
――さすがです。現在はディレクターとして、どのような仕事を担当されているんでしょうか。
スタッフの教育、シーズンビジュアルのディレクション、あとはプレスも担当しています。サロン全体のブランディングにはあまり手を加えないようにしていて、スタッフ一人ひとりの”個”を強化するようにしています。サロン全体で押し出すスタイルを統一することもありませんし、強みとして何を打ち出すかも自由です。ただし「一生美容師をする」という前提で技術を教えているので、うちの技術教育はすごく厳しいです。そのぶん、乗り越えるとマインドもそれなりにしっかり育っていきます。
僕らは、初期に爆発的に売れることが”いいこと”だけだとは思ってないんですよ。美容師を一生の仕事にするのであれば、20代の最初の数年の売上がその後を左右することはないですからね。もちろん、今の時代はSNSを活用したほうがいいですし、投稿をしないというのは怠惰でしかないですよね。行動は必要だと思っています。
お客さまに合う“無理のない”スタイルが一番
――HEAVENSの技術の特徴としては、やはりカットでしょうか。
そうですね。うちは実践的な2セクションカットの技術がベースで、今は耳下を分けた3セクションでカットすることもあります。パネルカットをリアルなサロンワークに落とし込んだ技術で、作業効率を考えたカット法ですね。その切り方で綺麗に切るのは、かなり難しいですし練習が必要ですが、お客さまからは「持ちがいい」と好評なんです。仕上がりに重みがあるので、時間がたっても崩れにくいんですよ。再現性を一番大事にしています。
HEAVENSでは決まったスタイルを提案することはなくて、対話の中で聞き出したお客さまのライフスタイルを踏まえ、その人の髪質に合うスタイルを提案しています。そうすると”無理”がないので、お客さま自身も扱いやすくてラクなんですね。客層はスタイリストごとに違いますが、僕の顧客は中学生からご年配までいますし、いろんな職業の方がいますよ。凝ったスタイリングをしたくないお客さまが多いですし、アイロン仕上げをすることもほとんどないです。
――最後に、今後の展望などあれば教えてください。
昨年からスタイリスト全員が登壇する「HEAVENS CAMP(ヘブンスキャンプ)」というセミナーを始めましたが、これを毎年やっていこうと思っています。あとは、社内教育をもっと磨いていきたいですね。それぞれの個が活躍しながら、組織として一枚岩になり、”技術集団”としてもっと上を目指していきたいなと。うちは毎年、数人の新卒しか取りませんが、入社してくれたスタッフがしっかりと成長して仲間となって一緒にサロンを作っていける環境が理想です。常にいいスタッフが入ってくれれば会社は自然とうまく回るので、その基本的なことを大事にしていきたいと思っています。
- プロフィール
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世良田 奏大(せらたそうた)/『HEAVENS』ディレクター
東京都出身。日本美容専門学校卒業後、新卒でHEAVENSに入社。4年半でスタイリストデビューし、ヘア雑誌や業界誌でも活躍。現在はサロンワークを中心に、ディレクターとしてスタッフ教育やシーズンビジュアルなどを担当。
Instagram:@seratasouta
(文/織田みゆき 撮影/松林真幸)